デレク・ソロモンズ&レストロ・アルモニコ『ハイドン:交響曲集 49曲』(18CD)~初発売5曲・初CD化多数!
『新ハイドン・ルネッサンス』と絶賛されたピリオド楽器による初の体系的かつ画期的なハイドンの交響曲録音がついにその全貌を現す!デレク・ソロモンズがハイドン時代の編成で、各曲の個性に生命を吹き込んだ名演ぞろい。49曲のうち、初発売5曲・初CD化多数!
1980年代以降、ピリオド楽器による演奏および録音が活発化する中で、ハイドンの106曲の交響曲全曲録音が何度か試みられました。その先鞭をつけたパイオニア的なプロジェクトが、ロンドンを拠点とするヴァイオリニスト兼指揮者のデレク・ソロモンズ(1937年生まれ)によって開始されたのは1980 年のこと。ソロモンズはイギリスのピリオド楽器奏者を厳選して組織したオーケストラ、レストロ・アルモニコ(「調和の霊感」の意味で、ヴィヴァルディの協奏曲集の名に範を採る)とともに 1986年にかけて49 曲の交響曲を録音しました。今回の18枚組のセットには、当時のCBSマスターワークスに録音されアナログおよびCDとして発売された音源のほか、イギリスSAGAレーベルから発売されていた音源を網羅する形で、ソロモンズのハイドン録音の全てが一つのボックスにまとめられることになりました。しかもCD14に収録された5曲は今回が初発売の音源となります。
このプロジェクトの数年前に創設された「レストロ・アルモニコ」は当初はモダン楽器を使用してヴィヴァルディ作品を演奏する室内アンサンブルでしたが、1978年のバース音楽祭で初めてガット弦とオリジナル・ボウを採用し、それ以後はピリオド楽器使用のアンサンブルへと変貌し、レパートリーもバロックから古典派へと拡大していきました。グラモフォン誌のインタビューで「レストロ・アルモニコのオリジナル楽器での録音デビューにハイドンの交響曲はぴったりだったし、ハイドンの交響曲をピリオド楽器で初めて録音するのも重要なことだと考えました。ハイドンがエステルハージ伯爵のもとで働き始める前に、モルツィン伯爵のために14曲の交響曲を書いていたことも発見しました」と、ソロモンズは述べています。
オーケストラの規模に関しては、ソロモンズが頼りにしたアドバイザーは 、ハイドン研究者として有名なH.C.ロビンス・ランドンでした。ランドンは当時の資料から、モルツィン伯爵のオーケストラは第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンがそれぞれ3挺ずつ、ヴィオラ、チェロ、コントラバスが各1、オーボエが1対、ホルンが1対、ファゴット、(曲によりトランペット1対、ティンパニが加わる)で構成されていたと判断しており、ソロモンズはそれを演奏と録音に採用したのです。これについて、ソロモンズは「弦楽パートと管楽パートのバランスが変化したのが画期的でした。管楽器は初期の交響曲では弦楽パートをなぞっているにすぎませんが、時代が下るにつれ、より重要な役割を担うようになります。その変化の度合いが実に鮮明にわかるようになったのです」と語っています。参加メンバーは、自らヴァイオリンを弾いたソロモンズのほか、キャサリン・マッキントッシュ、エリザベス・ウォーロフィッシュ、パヴロ・ベズノシウク、ロイ・グッドマン、モニカ・ハジェット(ヴァイオリン)、アンソニー・プリース(チェロ)、ポール・グッドウィン(オーボエ)、アンソニー・ハルステッド(ホルン)、マイケル・レアード(トランペット)ら、イギリスのピリオド楽器演奏家の精鋭で構成されていました。
ロンドンのノース・フィンチリーにある聖バーナバス教会で初期の「モルツィン」期(1757年頃から1760年頃)をSAGAレーベルに録音した後、ソロモンズは、ハイドンがボヘミアのカール・モルツィン伯爵から、ウィーンの裕福で影響力のある音楽愛好家でもあったハンガリーのエステルハージ伯爵に移ってからの数年間、つまり1760年頃に作曲した画期的な「疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)期」の交響曲に目を向けました。CBSマスターワークスがSAGAからプロジェクトを引き継ぎ、疾風怒濤期の交響曲録音を完成させ、さらにモルツィン交響曲の5曲(CD14)も録音されました。これらの録音は作曲された時期によってまとめられてボックス化されたため、ハイドン全集の楽譜のナンバリングとは異なる順序でカップリングされたことも話題となりました。録音が進むにつれ、当初は「モルツィン伯」のサイズを維持する予定だったのが、「疾風怒濤期」の後期になると作品のテクスチュアをより適切に表現するために編成を拡大する必要に迫られ、最終的には弦楽パートは第1ヴァイオリン6、第2ヴァイオリン5、ヴィオラ2のサイズに増強されました。
レストロ・アルモニコと「パリ交響曲」、そして最終的には全交響曲を録音するというソロモンズの構想は残念ながら実現しませんでしたが、発売されたレコード・CDにはほぼ満場一致の高い評価が与えられました。『軽い質感、端正さ、正確さに感銘を受ける…弦セクションの小ささ…そのため特に素晴らしい高音のホルンが絶対的に明瞭に聞こえる』(グラモフォン誌)。『従来のハイドンに戻るのは非常に難しい。比べると、これまでの演奏はあまりにも礼儀正しく退屈に思える』(クラシッカル・ミュージック誌)。 『ハイドンの独創性を再発見したときに感じる高揚感は、大規模な交響楽団のスチームローラーによって平らにされた。そういったハイドンを二度と聴くことができなくなるという事実」(ミュージック&ビデオ・ウィーク)。 2012年にはBBCミュージック・マガジンの評論家がこれらの演奏を『私が聴いた中で最も素晴らしいハイドン演奏の一つ』と表しています。
収録内容
ヨーゼフ・ハイドン:
<CD1>(初出:「ハイドン:交響曲集第7巻」疾風怒濤期の交響曲/I3M 37861)
交響曲第39番 ト短調 Hob.I:39
交響曲第35番 変ロ長調 Hob.I:35
交響曲第38番 ハ長調 Hob.I:38
[録音]1981年、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD2>(初出:「ハイドン:交響曲集第7巻」疾風怒濤期の交響曲/I3M 37861)
交響曲第59番 イ長調 『火事』 Hob.I:59
交響曲第49番 ヘ短調 『受難』 Hob.I:49
交響曲第58番 ヘ長調 Hob.I:58
[録音]1981年、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD3>(初出:「ハイドン:交響曲集第8巻」疾風怒濤期の交響曲/I3M 39040)
交響曲第26番 ニ短調 『ラメンタツィオーネ』 Hob.I:26
歌劇『漁師の娘』Hob.I:106 ~序曲
交響曲第41番 ハ長調 Hob.I:41
[録音]1983年6月7日~10日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD4>(初出:「ハイドン:交響曲集第8巻」疾風怒濤期の交響曲/I3M 39040)
交響曲第48番 ハ長調 『マリア・テレージア』 Hob.I:48
交響曲第44番 ホ短調 『悲しみ』 Hob.I:44
[録音]1983年6月7日~10日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD5>(初出:「ハイドン:交響曲集第8巻」疾風怒濤期の交響曲/I3M 39040)
交響曲第52番 ハ短調 Hob.I:52
交響曲第43番 変ホ長調 『マーキュリー』 Hob.I:43
[録音]1983年6月7日~10日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD6>(初出:「ハイドン:交響曲集第9巻」疾風怒濤期の交響曲/I3M 39685)
交響曲第42番 ニ長調 Hob.I:42
交響曲第51番 変ロ長調 Hob.I:51
[録音]1983年11月14日~18日、28日~30日、12月1日~2日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD7>(初出:「ハイドン:交響曲集第9巻」疾風怒濤期の交響曲/I3M 39685)
交響曲第45番 嬰ヘ短調 『告別』 Hob.I:45
交響曲第46番 ロ長調 Hob.I:46
[録音]1983年11月14日~18日、28日~30日、12月1日~2日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD8>(初出:「ハイドン:交響曲集第9巻」疾風怒濤期の交響曲/I3M 39685)
交響曲第47番 ト長調 Hob.I:47
交響曲第65番 イ長調 Hob.I:65
[録音]1983年11月14日~18日、28日~30日、12月1日~2日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD9>[初CD化](初出:「ハイドン:交響曲集第10巻」疾風怒濤期の交響曲/M3 42111)
交響曲第50番 ハ長調 Hob.I:50
交響曲第64番 イ長調 『時の移ろい』 Hob.I:64
交響曲第54番 ト長調 Hob.I:54
[録音]1984年11月19日~30日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD10>[初CD化](初出:「ハイドン:交響曲集第10巻」疾風怒濤期の交響曲/M3 42111)
交響曲第55番 変ホ長調 『学校の先生』 Hob.I:55
交響曲第56番 ハ長調 Hob.I:56
[録音]1984年11月19日~30日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD11>[初CD化](初出:第57番=「ハイドン:交響曲集第10巻」疾風怒濤期の交響曲/M3 42111、第63番=「ハイドン:交響曲集第11巻」疾風怒濤期の交響曲/M3 42157)
交響曲第57番 ニ長調 Hob.I:57
交響曲第63番 ハ長調 『ラ・ロクスラーヌ』 Hob.I:63
[録音]1984年11月19日~30日(第57番)、1985年11月18日~20日(第63番)、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD12>[初CD化](初出:「ハイドン:交響曲集第11巻」疾風怒濤期の交響曲/M3 42157)
交響曲第60番 ハ長調 『うっかり者』 Hob.I:60
交響曲第68番 変ロ長調 Hob.I:68
[録音]1985年11月18日~20日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD13>[初CD化](初出:「ハイドン:交響曲集第11巻」疾風怒濤期の交響曲/M3 42157)
交響曲第66番 変ロ長調 Hob.I:66
交響曲第69番 ハ長調 『ラウドン将軍』 Hob.I:69
交響曲第67番 ヘ長調 Hob.I:67
[録音]1985年11月18日~20日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD14>[初発売](ハイドン:モルツィン交響曲集)
交響曲第16番 変ロ長調 Hob.I:16
交響曲第17番 ヘ長調 Hob.I:17
交響曲第19番 ニ長調 Hob.I:19
交響曲第20番 ハ長調 Hob.I:20
交響曲第108番 変ロ長調 『交響曲 B』 Hob.I:108
[録音]1986年12月2日~9日、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD15>[初CD化](初出:「ハイドン:モルツィン交響曲集第1巻」/M3 42325)
交響曲第1番 ニ長調 Hob.I:1
交響曲第37番 ハ長調 Hob.I:37
交響曲第2番 ハ長調 Hob.I:2
交響曲第15番 ニ長調 Hob.I:15
[録音]1980年(8月19日~24日*)、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD16>[初CD化](初出:「ハイドン:モルツィン交響曲集第1巻」/M3 42325)
交響曲第4番 ニ長調 Hob.I:4
交響曲第10番 ニ長調 Hob.I:10
交響曲第18番 ト長調 Hob.I:18
[録音]1980年(8月19日~24日*)、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD17>[初CD化](初出:「ハイドン:モルツィン交響曲集第2巻」/イギリスSAGAレーベルから発売されていた音源]
交響曲第5番 イ長調 Hob.I:5
交響曲第32番 ハ長調 Hob.I:32
交響曲第11番 変ホ長調 Hob.I:11
[録音]1980年(12月9日~13日*)、ロンドン、聖バーナバス教会
<CD18>[初CD化](初出:「ハイドン:モルツィン交響曲集第2巻」/イギリスSAGAレーベルから発売されていた音源)
交響曲第33番 ハ長調 Hob.I:33
交響曲第27番 ト長調 Hob.I:27
交響曲第107番 変ロ長調 『交響曲 A』 Hob.I:107
交響曲第3番 ト長調 Hob.I:3
[録音]1980年(12月9日~13日*)、ロンドン、聖バーナバス教会
CD1~14:デジタル録音 / CD15~18:アナログ録音
CD9~13、15~16:初CD化
CD17~18:初CD化/イギリスSAGAから発売されていた音源でソニークラシカルからは初発売
CD14:初発売
録音年月日は今回のブックレット記載のものに拠っています
(*はイギリスSAGAレーベル初出時のインサートに掲載されていた録音年月日)
【演奏】
デレク・ソロモンズ(指揮、ヴァイオリン)
レストロ・アルモニコ(ピリオド楽器オーケストラ)
カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)
掲載: 2024年01月26日 12:00