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『ジョルジュ・プレートル&シュトゥットガルト放送交響楽団名演集』(8枚組)~生誕100年記念、CD3枚分が初出!

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ジョルジュ・プレートル生誕100年記念。首席指揮者を務めたシュトゥットガルト放送響とのホットなライヴ音源集が登場。初出あり


ジョルジュ・プレートルは、そのキャリアの終わりになって大きくイメージを変えた指揮者だった。長らくパリ・オペラ座の監督を務め、オペラ指揮者としての名声を得てきたプレートル。プーランク演奏に代表されるような、フランス近代音楽の名匠でもあった。

しかし、オペラと近代フランスだけが、プレートルではないとわれわれの多くが知ったのは、今世紀に入って、彼が80歳に手が届くような年齢になってからだった。ドイツ語圏のオーケストラと共演し、シンフォニックなレパートリーを指揮。その「巨匠」たる、奔放な演奏がわれわれを驚かしたのだ。2008年と2010年には、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートに史上最年長の指揮者として登場、まさに遅れてきた巨匠の登場となった。
今回、1996年から1998年まで首席指揮者、それ以降も終身名誉指揮者を務めたシュトゥットガルト放送交響楽団とのライヴ録音がまとめてリリースされる。
テンポや強弱など伸縮自在。ときには粘っこく旋律を歌わせるが、職人的なオーケストラが響きを引き締める。そのコラボレーションの見事なこと。
ベートーヴェンの交響曲第3番やブラームスの交響曲第1番などでは、テンポを細やかに揺らしながら加速感を作り、自然な活気を生み出す。なかでも、《ハンガリー舞曲》は、じつに濃厚。けれん味を何の衒いなく、素直に出してくれるのが痛快だ。
ブルックナーも彼の隠れたレパートリーだった。交響曲第4番も、テンポを動かし、細部に表現力を宿しつつも、全体のフォルムをきっちりと作り出す。
リヒャルト・シュトラウスの交響詩は、エレガントに旋律を歌わせ、丁寧な手つきで、滑らかにクライマックスを築く。《ばらの騎士》組曲のとろけるような優美さは、ちょっと異次元。
ベルリオーズの《幻想交響曲》は、水彩画のような繊細な色彩が印象的だ。とりわけ第2楽章のエレガントな響きに覆われた、強烈なタメを伴ったワルツ。楽章後半にテンポを増していく様子は、オペラのようにエモーショナルだ。後半楽章も、怪奇色は薄めだが、そのオーケストレーションの妙味を多分に引き出してくれる。
ラヴェルの《ラ・ヴァルス》も、とにかくうねりまくり。そして、フランス人指揮者らしい豪快さも。ビゼーの交響曲は、優美ながら闊達。すべてがバランスよく収まった理想的な演奏だ。
うねうねと伸び縮みしつつ、メロディをもんもんと歌わせるドヴォルザークの交響曲第9番。そして、マーラーの《葬礼》がとても個性的。改訂して交響曲第2番《復活》の冒頭楽章となる交響詩だが、不思議にも気品が漂ってくる演奏なのだ。低弦による冒頭主題が威圧的でなく、表情豊かに奏でられる。旋律の歌わせ方、テンポの揺らし方も、これまで聴いたことのない新鮮さ。
そして、2004年録音のレスピーギの交響詩は、断然に美しい。個々の奏者を存分に歌わせながら、木管などの重ね方が洒脱で、音色もきめ細かい。ストラヴィンスキーの《火の鳥》組曲も流麗にして歯切れよい好演。
指揮者ではなく、演奏家になりたかったというプレートル。まるでピアノやフルートを演奏しているかのように、表情たっぷりに旋律を歌わせるなど、自在にオーケストラをコントロールしている。彼の夢は、この晩年のシュトゥットガルト放送響との共演で叶えられたのかもしれない。---鈴木淳史

ジョルジュ・プレートル(1924-2017)の生誕100年にあたる2024年8月14日を前に、SWR(南西ドイツ放送)のアーカイヴから貴重なライヴ録音集が登場。フランス生まれのプレートルはトランペットを学んだ後、デュリュフレに和声を、クリュイタンスらに指揮を学びました。歌劇場でのキャリアが豊かで、パリ・オペラ座、スカラ座、コヴェント・ガーデン、メト、ウィーン国立歌劇場などで活躍し、マリア・カラスがキャリアの後期において頼りにした指揮者の一人としても知られました。プーランクと親交があり、彼の作品の録音は高い評価を得ました。
日本でのプレートルの人気がブレイクしたのは2008年。元旦にウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートに初登場し、年末にはウィーン交響楽団とのマーラーの第5番が2008年度のレコード・アカデミー賞交響曲部門を受賞して、ドイツ・オーストリア音楽における巨匠として大きく注目されました。更に2010年にはニューイヤー・コンサートに再登場(最年長記録)、秋にはウィーン・フィルとの日本公演を指揮して非常に強い印象を残したのでした。
シュトゥットガルト放送交響楽団での任期は1996年から98年と長くはありませんが、その前後を含めて楽団創設50周年記念コンサートやツアーを指揮し、楽団員からも慕われて退任後は名誉指揮者の称号を贈られ、定期的に客演を続けました。オーケストラ曲の王道というべきレパートリーを揃えたこのセットは彼のファンにとって大きな宝物となることでしょう。ブックレットにはドイツ・レコード批評家賞の審査員を務めるクリストフ・ヴラーツ氏によるエピソードをまじえた解説が掲載されています(英語とドイツ語)。
レーベルからの情報によれば、CD1、CD4、CD7は初CD化とのこと。
(ナクソス・ジャパン)

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【曲目】
【CD1】
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827):
1.劇音楽「エグモント」Op. 84 ー 序曲(1810)
2-5. 交響曲第3番 変ホ長調 Op. 55「英雄」(1802/03)
録音:
1995年10月6日 ブラティスラヴァ、Slowakische Philharmonie…1
1995年9月28-29日 シュトゥットガルト、リーダーハレ…2-5

【CD2】
ヨハネス・ブラームス(1823-1897):
1-4. 交響曲第1番 ハ短調 Op. 68(1862-77)
5-8. 4つのハンガリー舞曲 WoO 1(1869)
5. 第1番 ト短調
6. 第3番 ヘ長調
7. 第4番 嬰へ短調
8. 第5番 ト短調
録音:シュトゥットガルト、リーダーハレ
2000年12月8日…1-4
1997年10月29,31日…5-8

【CD3】
アントン・ブルックナー(1824-1896):
1-4. 交響曲第4番 変ホ長調 WB104「ロマンティック」(第2稿、1878/80)
録音:リンツ、ブルックナー・ハウス
1995年9月22-23日

【CD4】
エクトル・ベルリオーズ(1803-1869):
1-5. 幻想交響曲 Op. 14(1830)
6-7 ファウストの劫罰 Op. 24(1846)
6. 妖精の踊り
7. ハンガリー行進曲(ラコッツィ行進曲)
録音:シュトゥットガルト、リーダーハレ
1994年3月24.25日…1-5
2001年2月14,16日…6-7

【CD5】
モーリス・ラヴェル(1875-1937):
1. 『ダフニスとクロエ』 第2組曲 (1908-12)
2. ラ・ヴァルス
ジョルジュ・ビゼー(1838-1875):
3-6. 交響曲 ハ長調(1855)
録音:シュトゥットガルト、リーダーハレ
1997年10月29、31日…1
1995年12月22日…2
1991年6月28日…3-6

【CD6】
アントニン・ドヴォルザーク(1841-1904):
1-4. 交響曲第9番 ホ短調 「新世界より」 Op.95(1893)
グスタフ・マーラー(1860-1911):
5. 交響詩「葬礼」(1888)
録音:シュトゥットガルト、リーダーハレ
1996年10月14、28日…1-4
1998年6月24、26日…5

【CD7】
オットリーノ・レスピーギ(1879-1936):
1-4. 交響詩『ローマの噴水』(1916)
5-8. 交響詩『ローマの松』(1924)
イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971):
9-13. バレエ音楽 『火の鳥』(1919年版)
録音:シュトゥットガルト、リーダーハレ
2004年10月21,22日…1-8
2000年12月8日…9-13

【CD8】
リヒャルト・シュトラウス(1864-1949):
1. 《ばらの騎士》組曲(1945)
2. 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」 Op. 28(1894/95)
3. 交響詩「ドン・ファン」 Op.20(1888)
録音:
1998年10月2日 ウィーン、ムジークフェライン…1
1997年10月31日 シュトゥットガルト、リーダーハレ…2
1995年9月29日 シュトゥットガルト、リーダーハレ…3

全てライヴ録音
シュトゥットガルト放送交響楽団
ジョルジュ・プレートル(指揮)

カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)

掲載: 2024年06月28日 18:30