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インタビュー

hyde


91年、ベーシストのtetsuらとともに結成したL?'Arc-en-Cielのリード・ヴォーカリスト。地元大阪を中心にライヴ活動を展開したのち93年にファースト・アルバム『DUNE』をリリースしたL?'Arc-en-Cielは、94年のメジャー・ファースト・アルバム『Tierra』、95年『heavenly』、96年『True』、98年『HEART』、99年『ark』『ray』、2000年『REAL』とアルバムを重ねていくとともに数多くのシングル・ヒットを放ち、その人気を不動のものにしていく。2001年10月、HYDEにとって初のソロ・シングル“evergreen”を発表。12月には“Angel?'s tale”、2002年2月には“SHALLOW SLEEP”とシングルをリリースし、このたびファースト・ソロ・アルバム『ROENTGEN』(キューン)がリリースされる。

「バンド以外の方法、自分だけで最初から最後まで作る方法を、僕は試したことがなかったんですね。もともと自分だけのものを作るっていうのは好きで、家具(のデザイン)とかもそうなんですけど……ま、そういうような感じで。昔は絵を描いたりするのも好きだったんですけど、いまは専門が音楽になってるじゃないですか。だから、音楽でも同じように自分だけのものを作ってみたいという欲求があって」
 
といった経緯でこのたび届けられたHYDEのソロ・アルバム『ROENTGEN』。〈白と黒=二面性〉というキャッチフレーズがあって、そこにもっといろんな色が入ってきて……そして〈虹〉になった――と、ちょっと知られたラルク語録のひとつを持ち出して言うのであれば、本作は「小さな声で歌う感じ……小さな声で小さなサウンド、っていうことを考えてましたね」ということもあり、L'Arc-en-Cielに内包されていた〈白〉の部分を、より強調させた印象を受ける。そこにはなにか優しい感じとでもいうか……とはいえ、その〈優しさ〉に身を任せていると、時折ゾクッと鳥肌の立つような感覚が! 例えがヘンかも知れないが、クラシック音楽をフィーチャーしたオカルト映画のサウンドトラックのような。
 
「表面上はナチュラルだったりソフトであっても、内側はハードでありたいなあっていうのは、今回のアルバムを作るうえでずっと思ってたことで。どこかに〈棘〉のようなものは残しておきたい、でも、聴感は美しいという」
 
L'Arc-en-Cielの中の〈白〉を強調させた印象とはいえ、ここでもやはり〈白と黒=二面性〉といったような音のトリックを聴かせるHYDE。以前「ニューウェイヴに影響を受けた」と語っていたHYDEだが、それと本作を結びつけないわけにはいかない。
 
「当時は、ニューウェイヴの煌びやかな部分が印象的で、あのダークな部分には気付いてなかったんですね。僕はデヴィッド・シルヴィアンが大好きで、当時〈オトナの曲〉っていうイメージがあったんですよ。その曲をかけながらドライヴしてると、小さい車に乗ってても高級車に乗ってるような気分になって(笑)。僕は好きだったんだけど、友達とか乗せたときに〈コワ~イ〉とか〈オバケの曲?〉とか言われて、すごくショックで(笑)。いまとなっては、そう聞こえても当然かなって思いますけど」
 
そんな〈ニューウェイヴ世代〉が作り上げた『ROENTGEN』は、メロディー感にこそラルクでの印象を窺えたりできるものの、アコースティック楽器主体に鳴り響くサウンドの手触りは、かなり新鮮。
 
「ラルクだと、創造したイメージを全部バンドで再現しようっていう意識がどこかにあるんですね。でも、今回はバンドとかライヴのことをぜんぜん意識してなかったし、すごく自由に音を入れていった感じで」
 
自由──そういった意識のもとで作り上げられた作品には、自分自身が作り出すものに対して自分で美しいと言えるような〈美〉、すなわちHYDEがめざしていると思われる〈美〉を痛切に感じずにはいられない。
 
「自分がやってることは、時代性とかから考えれば、決してかっこいいものとは限らないと思うんですよ。かっこいいと思ってくれればラッキーですけど、普通にしているほうが今の時代はかっこいいんじゃないかと思いますけどね。ただ、僕らが聴いてきたもの――ニューウェイヴに影響されたってところもあるので、時代が求めているからといって、それに沿うことができない、したくないんですね。時代性を全く考えないとは言わないですけど、〈わかっちゃいるけど〉って感じで」

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年04月11日 12:00

更新: 2003年03月07日 19:07

ソース: 『bounce』 230号(2002/3/25)

文/久保田泰平