インタビュー

新しいお皿にズラリと盛りつけられた極上ネタの成分を検証

 birdの新作『極上ハイブリッド』は、多彩なゲストを迎え、これまで以上にナマの音の温もりを大切にしたアルバムに仕上がっている。もちろん、冒 頭の“私的パートナー”が、レコードのスクラッチ音をデジタル的に処理した 音遊びではじまるぐらいだから、いま現在の音楽動向にも意識的ではある。そ れでも、今の空気を十分に吸い込みつつ、爆発的なウネりをみせる “Number”をはじめ、小細工のない、一発録りの緊張感も前面に押し出した展 開になっているといえるだろう。

ボッサ調の“flow”では、途中からクラーベのリズムが 絶妙に絡みはじめるし、ひとことで○○風と括れない曲が多いのも、『極上ハ イブリッド』を名乗る所以だ。山崎まさよしとのコラボレーション・ナンバー “散歩しよう”は、リズミックなアコースティック・ギターを中心にしたシン ガー・ソングライター的な曲だが、ドゥーワップ風のコーラスがいいアクセン トになっている。さらに“夕風”は、ピアニカ前田を中心に、田中義人、宮田 誠、坂田学によるグループ、Bossa Pianikitaとの共演曲で、とても映像的、情景が目に浮かぶような曲だ。

映像的ということでは流との“久遠”も負けてはいない。流はDJ KRUSH、 DJ HIDE 、DJ SAKの3人がターンテーブルを操るユニットで、この曲では、彼 らが作るトラックに若林忠宏の叩くタブラが乗り、神秘的な響きを増している。 “モノクローム”と“ZERO”は、MONDAY満ちるが作曲し、ニューヨークのジャ ズ系ミュージシャンと作り上げたナンバー。テロ事件のためにbirdはNY入りで きず、東京とNYでデータのやり取りを重ねて仕上げられた。そして“うらら” は、Misiaやキリンジのアレンジ/プロデュースで知られる冨田恵一をプロデュー サーに迎えたナンバーだ。どの曲でも、共演者の個性を最大限に尊重しつつも、 birdのヴォーカル自体はくっきりと浮かび上がっているのが、なにより素晴らしい。

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月09日 21:00

更新: 2003年03月07日 16:30

ソース: 『bounce』 229号(2002/2/25)

文/高橋道彦

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