インタビュー

Ludacris

サザン・ヒップホップをスタンダードに押し上げたリュダクリスが、アフロを巨大化させて再臨!!

 名門デフ・ジャムが設立したデフ・ジャム・サウスからの第1弾アーティストとし て、2000年に『Back For The First Time』をリリースしたリュダクリス。アルバム のヒットはもちろん、シングル“Southern Hospitality”などもクラブ・ヒットし、 一躍人気者となった彼だが、当然、そのことによっていわゆる〈有名税〉が、良くも悪くも発生するものだ。

「プライバシーがまったくなくなったな。それと、あちこち移動してばかりだから 家が恋しくなるよ。2週間に3日ぐらいしか帰ってない。逆に、いつも自分の好きなだ けレコーディングしたいと思ってたから、それができるようになったのは良い変化だ 。でもやっぱりいちばんの変化は、金まわりだな。自分のファミリーの面倒を見られ るようになった」

環境の変化は人間に大きな影響を与える。が、そんな状況下でも常に自分を見失わ ない冷静なスタンスはどの分野においても重要なことであり、それは安定したキャリアを築くための必須条件だといえる。

「今回も、心から思ったことをレコーディングにぶつけただけで、とくにテーマと かは決めてないんだ。誰のためでもなく、俺のためにこのレコードを作った。それを聴いて共感してくれたり、大騒ぎしてくれればそれでいいし、基本的には前のアルバムよりも良いものを作ろうとしただけさ」

思ったことや、やりたいことをやるという姿勢は、アルバムを聴く前の段階でピンとくる。ユーモアたっぷりのジャケがそれである。

「ジャケットのデザインを決めるときに、いろんなフォトグラファーの作品集を見 比べて、おもしろいアイデアを見つけたんだ。それで、そのフォトグラファーといっ しょにアイデアを出し合って作ったのがこれさ。コンセプトは、〈人と違ったものに して目立ってやろう〉ってことだ。レコード・ショップで、ほかのアルバムより俺のアルバムを見てもらいたいからな」

プロモーションについても「人から人へ、噂が噂を呼んで、という会話の中でお互いに伝わるという部分も大事なプロモーションだと思ってる」と話すリュダクリス。 ラジオやTVも重要だが、いちばんのプロモーションは、アルバム・タイトルにもなっ ている〈Word Of Mouf〉(口コミ)だというのだ。今回のジャケが与えるインパクトは確かに強烈で、その発言を裏付けるものになるだろう。なによりもコミカルな印象 を与えるデザインは、リュダクリスのアーティスト性をうまく表現しているといえる 。その一方で、アルバム全体に彩りと深みを与えるという注意も彼は忘れていない。

「〈コミカルで楽しげ〉っていうのも俺の自然な姿ではあるけど、アルバムを聴いてくれれば、シリアスで多彩な面も俺にはあるってことがわかるさ。メタファーばか りを使って、ただライムをしていくだけの曲もあるし、困難な状況についての曲もあ る。愛とか、クラブで喧嘩とか、いろんなトピックやエモーションを表現して集めたアルバムなんだ」

その言葉に嘘はなく、アルバムのオープニングを飾る“Coming 2 America”から聴き手の期待は高まる。「1曲目ってのはいつでも、そのアルバムの残りの曲に期待を持たせるような魅力的な曲じゃなきゃならない」とも彼は話しているが、確かにアル バムを聴けば、単純に前作と比較しても、それぞれ曲ごとに違うテイストを含んだ、ヴァラエティーに富んだ内容であることにすぐ気付くだろう。

「それが俺の狙いだったんだ。もっとヴァーサタイルな作品にしたかったからな」

エリアに関係なく、どの都市からでもヒットが生まれる可能性に溢れた現在のシーン。「俺は俺であるだけさ」と冷静に語るリュダクリスの言葉は、アルバムを聴き終 えた後で、さらに重みをもって響いてくるのだ 。

PROFILE

アトランタに基盤を置くMC。変幻自在なフロウと個性的なリリシストぶりで、早くか ら地元で注目を集め、無名時代よりティンバランドらと共演を果たしている。2000年 に自主レーベルのディスタービング・ザ・ピースから『Incognegro』をリリース。そ のローカル・ヒットを受けてデフ・ジャム・サウスと契約。その後、シングル・ヒッ トを連発して、200万枚を超えるセールスを記録した『Back For The First Time』で メジャー・デビュー。2001年にも“Area Codes”“Rollout”が連続ヒットし、この たび待望のニュー・アルバム『Word Of Mouf』がリリースされたばかり。

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掲載: 2002年05月09日 18:00

更新: 2003年03月07日 16:37

ソース: 『bounce』 228号(2001/12/25)

文/高橋荒太郎