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インタビュー

ママスタジヲ

ひねくれまくったポップ・センスがひと巡りして、正しく楽しいポップが生まれちゃいました!

 〈時代と、どのように距離をとるか。多くのアーティストが時代の数歩先を行こうと必死になるなか、 京都を拠点に創作活動を展開するママスタジヲは、あえてそこからユニークな距離のとりかたをすることで、 その個性を確立させてきたバンドだ。時代の数歩先を行ってんだか後を行ってんだかわからない微妙な立ち位置。 それをキープすることで彼らは、懐かしさと新しさ、 そして爬虫類のようなクネクネ感と凶暴さが微妙にクロスオーヴァーしたストレンジなポップ・ミュージック街道をゆる~く暴走してきた。

 「僕は音楽に対して分析癖があるんですよ。(あるジャンルの音のパターンが)出尽くしたころに俯瞰して、 〈ああ、なるほど〉みたいな。そういうふうに距離を置かへんかったら、次に行けないんです」(小泉大輔)。

 初期XTCに象徴されるニューウェイヴの遺伝子(精神性)を継承した〈数回転ねじくれポップ〉をクリエイトするバンドは、いまや世界中に星の数ほどいる。 だが、その中において彼らはポップスの箱庭に閉じこもるのではなく、 メンバー4人のキャラクターをぶつけ合わせることで、 その音世界をさらに異形なものへ変容させてしまおうと心掛けてきた。
 
 「〈これはあれっぽいアレンジで〉みたいなのはやってしまいたくないというか。 たとえば〈ここはオルガンの音かな?〉と思っていると、 メンバーは違う音を持ってくるんですよね。〈そうきたか!〉みたいな微妙なところをついてきては、 メンバー同士でおもしろがり合っているんです」。

 メジャー・デビュー・アルバムとなる『ママスタジヲのママスタジヲ』は、彼らのそんなお茶目なポップ・センスが痛快なまでに炸裂しまくった作品だ。 聴き手が予想もしなかった方向に曲がどんどん発展していきながら、最終的にはポップというところに着地。 そのようなミラクルな離れ業を、彼らはやってのけてしまっているのだ。
 
 「売れたいというよりは、ちょっとビックリさせてやろうという気持ちがありますね。 たとえば、コワめの言葉をハッピーなメロディーに乗せて歌うことで、 その曲を渋谷を歩いてるような女子高生が口ずさんでくれたらおもしろいなとか(笑)。 そういう一人遊びをしながら曲を作っているところがあるんですよ。 いまの目標は、ベーシストのみなぢ(杉村美奈)の髪型が渋谷中に広がればいいなというか(笑)。 (もしそうなったら)自分らダマされてるやんって(笑)。でもそれがポップかなって」。

 ポップ・カルチャーの歴史において、ポップ・ミュージックをよりユニークなものへと進化させてきたのは、 いつの時代も〈物事を違った角度から眺めるユーモラスな視点〉であった。 音楽シーンを俯瞰して分析し、4人それぞれが自分なりの視点を音に盛り込んでいくことによって、 ママスタジヲはきっとこれからもポップ・カルチャーをさらにユニークなものへと変容させていくに違いない。 というか、そうなってもらわなくては困るのだ。 なんてったって、ファースト・アルバムにしてすでにこんなにもミラクルなポップ・アルバムを作り上げてしまえる音楽的底力とセンスが君たちには備わっているのだから。

 「僕ら、生まれた時点であきらめてる世代ですからね。 (過去のものと)同じことはしたくないけど、新しいものが出てこないこともわかってる、みたいな。 だからそこに僕らのパーソナリティーを入れてみて、 ちょっと新しくして楽しかったらいいんじゃないかという感じかなあ。 けど、どっかで夢見てるところもあるんですよ。ただ、もうギターを持ってしまっているから、 そこであがくしかないみたいな。そこでせめぎ合いながら、 これからもおもしろいことができたらいいなと思いますね」。

PROFILE
 96年、小泉大輔(ヴォーカル/ギター)を中心に結成。 98年に、川口智士(シンセサイザー/ヴォーカル)、杉村美奈(ベース/ヴォーカル)、 伊藤浩(ドラムス)を加えた現在のラインナップとなる。数枚のオムニバスCD参加を経て、 2000年8月にミニ・アルバム『デキルカナ?』を発表。その独自なポップ・センスが話題となる。 2001年3月の“ステロタイプポップ”、 7月の“アンダーグラウンド”とシングルのリリースを重ねるごとに注目度が上昇、 メジャー・デビューへのきっかけをつかみ、 ファースト・フル・アルバム『ママスタジヲのママスタジヲ』を12月5日にリリースする。  

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月16日 11:00

更新: 2003年03月07日 19:13

ソース: 『bounce』 226号(2001/10/25)

文/小暮 秀夫