こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

LITTLE

リスナーへの<ラブ>を込めた<小さな巨人>待望のファースト・フル・アルバム到着!

 「キック(KICK THE CAN CREW)のほうが忙しかったから、このタイミング(ファースト・ソロ・シングル“いいの”から約3年)になったんですよ。まあ、キックが落ちぶれてたら、なかなか個人活動もできないんですけどね。今回はもう、楽しませてもらいました(笑)」。

ついにLITTLE待望のアルバム『Mr.COMPACT』が完成した。現在、〈キックのリーダー〉というイメージが先行している彼だが、ジャパニーズ・ヒップホップの黎明期にシーンを震撼させた硬派集団、ZINGIファミリーの一員からスタートし、カセットビジョンクルー(KICK THE CAN CREW、INNO-SENCE 、DJ TATSUTA 、DJ SHUHOらによるクルー)のリーダーでもある。それらのメンバーをはじめ、DJ OASISやRHYME-STERのMUMMY-Dなど多彩な面子をゲストに招いて制作された本作には、色とりどりのドープなビーツが百花繚乱のごとく咲き乱れている。それにしても、あまりにも〈商品〉としてレコーティングされていない点が、まず気になったのだけれど?

「すべて録り終わるまで、インディーでのリリースかと思ってたんです(笑)。まあ、こんな作品を出せるほど、キックが本人たち主導でやってるってことを理解してくれれば、うれしい」。

KICK THE CAN CREWにおけるLITTLEを〈陽〉とするならば、まさに〈陰〉の部分が如実に出たと言える、興味深いこのソロ・アルバム。個人のスキルに焦点が当たりにくいのが、グループ・ラッパーの性。しかし本作では、持ち前の技量をこれ見よがしに提示しており、彼が〈ヒップホップ界の小さな巨人〉と呼ばれる所以を再確認できる作風となっている。

「〈韻を踏みたい!〉という欲求がありつつも、テーマやアイデア、なにより自分のスキルを見せたかった。スキットの代わりに短いラップをやったり、退屈にならないようにラップの仕方を変えたり、とか。キックじゃできないことをやったので、俺の間口の広さがわかってもらえると思う」。

KICK THE CAN CREWで味わえないことといえば、曲ごとに変貌する声の魅力も、また然り。なかでも“MC~殺人マイクを持つ男~”の速射フロウには飛ばされた。

「本当は、速いほうがやりやすくって。BPMが120~130のラップが普通。MCになったら160~170ぐらいになるから。今回は挑戦ですね。〈カラオケで歌えないラップを作ってみました。どうぞ真似してください!〉と。で、みんなのスキルを上げちゃおうかなって(笑)」。

さらに注目したいのが、詞の内容。全曲を聴けば、過去から現在に至る彼の想いや人間性が浮き彫りになってくるという趣向が施されているのだ。99年のセカンド・シングル“Child Play”で見せたシニカルな視点も顕在で、彼のあいかわらずな様子も窺える。

「キックで売れる前は、意地が悪くてズルいと、よく周りに言われてて。その評価にすごく満足してたんだけど、なぜか最近は良い人ゾーンにもってこられていて困ってたんですよ(苦笑)。そこで、ヒネくれた面からくだらないグチ、想い出話や田舎臭い感じを、ホンネに近い形で詞に出して。俺は渋谷のスターバックス・コーヒーみたいにはなれないんだよ、っていうのを伝えたかった」。

このアルバムから与えられる強い親近感は、最後まで聴いても再度リピートしたくなってしまう、という不思議さも併せもっている。その背景には、このような思いが隠されていた。

「武装しないで作ったから、リスナーと密着できる作品になってると思うんです。で、結局わかり合えないとは思いつつ、わかり合いたいという気持ちが込められている。つまり、リスナーへの〈ラヴ〉から始まったものなんですよね」。

PROFILE

 76年東京生まれ。KREVA、MCUとともにKICK THE CAN CREWを結成し、97年にデビューする。KICK THE CAN CREWとして活動を続けるかたわら、INNOSENCE、DJ TATSUTA、DJ SHUHOとによるカセットビジョンクルーのリーダーとしても活躍。ソロとしては、98年11月にミニ・アルバム『いいの』をリリース。2000年3月にはマキシ・シングル“Child Play”を発表し、どちらも高い評価を受ける。KICK THE CAN CREWのリーダーとして多忙を極めるなか、待望のファースト・フル・アルバム『Mr.COMPACT』が12月5日にリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月16日 11:00

更新: 2003年03月06日 20:20

ソース: 『bounce』 227号(2001/11/25)

文/金田 美穂子