インタビュー

スーパーバタードッグ

ゴキゲンなリズムに乗ってクイクイと腰を揺さぶりつつも、思いがけずキュンとさせられる瞬間しばしば。スーパーバタードッグの新作『grooblue』は、下半身と胸のここいらと涙腺あたりまでグッとくるんです!

 アルバム先行シングルにアコースティックな質感のバラード・ナンバー“サヨナラ COLOR”を持ってきた2001年のスーパーバタードッグ。お得意の造語をビシバシキメて、独自の宇宙観を作り出してきたこれまでの彼らからすると〈あまりに直球すぎやしないか?〉、あるいは〈直球だけど単純にいい曲じゃない?〉などなど、いろんな声 があちこちから聞こえてくるわけですが、完成したばかりのニュー・アルバムを『grooblue』と名付けた日には、なぜ〈groove〉は〈blue〉なのか?と訊ねたくなるわけでして……。

「〈Blue〉っていうのは、もちろん〈せつなさ〉っていう意味もあるんだけど、風景というか色味でいうところの〈水色〉っていう含みもあって。〈せつない〉っていう感情は日本人っぽいなって思うんですよ。ゲットー生まれのアメリカ人だったら〈オレが生まれたところでは日々大変なことが……〉っていうことが言えたりするのかも知れないですけど、オレは国立生まれで、普通の住宅街で育ってますからね(笑)。だから、もっと日本人的なタイトルがいいなって思ったんですよ」(永積タカシ、ヴォーカル/ギター)。

スーパーバタードッグといえば、前作のアルバム・タイトル『FUNKASY』からしてそうであるように、ファンク・ミュージックとそこから広がるコズミック・ワールドをその手中に収めるべく、日夜、切磋琢磨を繰り返してきた5人組と相場は決まっていたわけですが、本作にはファンク~レア・グルーヴの脂っこい旨味成分を抽出した“日々 GO GO”や“ギャンブル FUNK”といった楽曲に混じって、カーティス・メイフィールドやデルフォニックスを彷彿とさせる甘茶ソウル・チューン“らばの歌”や、ストリングスをまとったフィリー・ムードの“O.K”といった楽曲をフィーチャー。意外かもしれませんが、このスウィートな赤心の歌が、味噌汁でいうだしにあたる隠し味になっているような……。

「〈ファンク〉っていう言葉が自分の中にうまくハマらないなって思うのは、その言葉にアメリカンなイメージが強すぎるところなんですよね。〈リズムが好き〉だとか〈うねりの中で歌ってたい〉っていうのはあっても、オレは違うんだよ! 中央線だよ! みたいな(笑)」(永積)。

「ファンクを語るとするなら、JBしかありえない。でもウチらは?っていったら、みんなそれなりに聴くし、オレももちろん大好きだし、でも、それを真似しようっていう気はさらさらないんです」(竹内朋康、ギター)。

ファンクなる音楽を違和感なく日本という国で鳴らすこと。それは多くの音楽家たちが直面し続けている課題であるが、彼らにあっても同様。あの細かく刻まれるリズムを壊さずに言葉を乗せる試行錯誤は、タイトルどおりに五十音を駆使した“五十音”を聴けばおわかりいただけると思う。さて、サウンド面ではどうだろう? “コミュニケーション・ブレイクダンス”や“FUNKYウーロン茶”といったアッパー・チューンのみが彼らの代表曲とされる状況こそ、逆にいまとなっては不自然な気がしないだろうか?

「もちろん最初は〈向こうの音に影響されて……〉っていうのはあったけど、いまはその音を使って、自分のまわりで見えるものを表現しようって思ってます」(永積)。

その意味で本作は生活に根ざした音楽を志したと同時に、そのグルーヴに彼らなりの色づけを施そうという、勇気ある第一歩なのであろうし、〈そこから旅立つことは/とても力がいるよ〉と歌われる“サヨナラCOLOR”は、だからこそ胸を打つのだ。

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掲載: 2002年05月23日 21:00

更新: 2003年03月03日 22:47

ソース: 『bounce』 227号(2001/11/25)

文/小野田 雄

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