サイプレス・ヒルの現在をより楽しむためのサブ・テキスト
WAR『Why Can't We Be Friends?』
Avenue(1975)
チカーノたちにとっての永遠の誇りであり、財産。それがウォーだ。ここに収められ た彼らの代表曲“Lowrider”は何度となくサンプリングされた不朽の名曲で、サイプレスは今回カヴァーに挑戦。まったりと弛緩しつつも仄かに不穏な空気を醸し出すような、独特のもやもやしたグルーヴを生み出している。
SX-10『Mad Dog American』
Latin Thug(2000)
サイプレス『Skull & Bones』にバンド編成の方法論を持ち込んだのは出戻りのセン・ドッグと、その彼がリード・ヴォーカルを務めるこのサイド・プロジェクトだ。現サイプレス・バンド・サウンドの骨子を担う彼らは、骨っぽいハードコア・サウンド で本体を喰い荒らしかねない閃きを見え隠れさせている。
EVERLAST『Eat At The Whitey's』
Tommy Boy(2000)
マグスが後見したハウス・オブ・ペインでの活動から、いまはギターを抱えてラギッドなブルーズを奏でるエヴァーラスト。かつての相棒DJリーサル(リンプ・ビズキット)はいまやヘヴィー・ロック・シーンの頭脳。現在のサイプレスは両名の行き方を 混ぜ合わせたもの……といえばやや乱暴か?
FEAR FACTORY『Digimortal』
Roadrunner(2001)
LAを拠点にしたヘヴィー・グルーヴの重鎮、フィア・ファクトリー。このアルバムに はB・リアルが助力し、彼ら側からも『Skull & Bones』に貢献するなど交流も盛んな様子。ベース/ギターのクリスチャン・オールドは今回の『Stoned Raiders』にも参加し、手慣れたプレイで楽曲中にダイナミズムを注入している。
SLOWRIDER『Nacimiento』
Barrio Gold(2001)
LAはエコーパーク発のグループ。ジャズ、ロック、ファンク、ヒップホップなどジャンルのゴッタ煮具合は、チカーノ音楽に独特な哀愁と喧噪の入り乱れぶりにそのまま繋がっている。サイプレスとは表層こそ異なっても、その奥底に秘められたヴァイブ を開き合えば、きっと同じ異臭がするに違いない。
MELLOWMAN ACE『From The Darkness Into Light』
Cleopatra(2000)
兄セン・ドッグ、B・リアルとともにDVXというグループを結成していた人で、スパングリッシュ・スタイルの先駆けとなったラッパー。本作にも盟友サイプレスのメンバーたちがそれぞれ参加。ここにあるサンタナ的なうら寂しい路地裏情緒は、マグスがもっともラテン方向に振り切れた瞬間の記録だ。
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