インタビュー

Cypress Hill

デビューから早くも10年。バンド形態に挑み、ヘヴィー・グルーヴを血肉化したサイプレス・ヒル。新作『Stoned Raiders』が煙の向こうから全貌をあらわした!!

 「オレらのニュー・アルバムには……これまでとは異なる次元の迫力を感じるハズ だよ。サウンド自体ずっと進歩したし、より完成されたプロデュースがなされてる。 ビッグでクリーン。かつてないほどにね。ソニック面において、これまでとは絶対に 異なるレベルへと歩んでいるんだ。目標を制覇したって感じだよ(笑)」(マグス、 DJ/プロデュース)。

激烈なアガりっぷりを堪能させてくれたフィルモアでのライヴ盤に続くサイプレス ・ヒルのニュー・アルバム『Stoned Raiders』。オリジナル・アルバムとして通算6枚目となる今作には、前スタジオ作『SKull & Bones』で初お披露目された、生バンド演奏を本格的に導入してハードかつファンキーにロックするニュー・サイプレス・ サウンドが確実に進化した形で存在している。

「オレらのコンセプトは変化なんだよ。自分たちがイイと思ったものを採り入れながら、サイプレス・ヒルは常に変化してる。けど、サイプレスはサイプレス。それは まったく同じままなんだ。ちょっとしたトリックさ。変化してるんだが変化してない ……奇妙な哲学みたいに聞こえるかもしれないが、それが実際にオレらのやってるこ とさ。片足を昔に突っ込んで、そしてもう片足を新しいことに突っ込んでおくんだ。 だからこそサイプレスはいつも新鮮でいられるんだし、こうしてクソッタレな12年目 に突入することもできたってわけさ(笑)」(マグス)。

「ヒップホップが常にオレらの音楽であることに、もちろん変わりはない。けど、 だからってそこに留まっていたんじゃ、安易すぎるだろ? オレらにとってヒップホップはごく自然にできてしまうことだからさ。前作からやってるロック・サウンドの導入ってのは、オレらにとってはチャレンジなんだよ。オレらがそれをやるのは、純粋にそれがチャレンジだからなんだ。オレらはいつでもチャレンジしていたい。自分 たちの音楽をクリエイティヴに保ち、自分たちの音楽を一段と発展させていくには、 チャレンジが必要なんだよ」(B・リアル、MC)。

ただ、ヒップホップ・ファンの中にはロックを気に入らないヤツらもいる。

「まあ、いまでもそういう連中がいるのは確かさ。実際、オレだって、以前に誰かに〈ヒップホップにロック・サウンドを重ねるのはどうですか?〉って訊かれた時には、〈いやー、そういうのって良くないよ。なんだか間違ってると思う〉とかって言ってたくらいだから(笑)。でも、時間を経て、いろいろ考えているうちに、〈なにはともあれ所詮は音楽じゃねえか〉って思えるようになったんだ。〈ちょっと待て、 ロックはヒップホップの兄貴みたいな存在じゃないのか?〉ってな。反骨精神にしたって、セックスやドラッグや……社会的な概念にしろ、両者はいろんな面においてよく似通っている。だからオレは、自分の言いたいこと、感じることをラップできるんなら、ロックであろうがヒップホップであろうがまったく関係ないんじゃないかって 思うようになったのさ。重要なのは、いい音楽であること……それだけでね。いまのオレらのサウンドは、ある人たちにとっては慣れが必要なものかもしれないし、中にはぜんぜん聴きたくないやってヤツだっているだろう。それはそいつ次第だ。他人の意見に振り回されるんじゃなく、自分の意見で選べばそれでいい。自分の意見をもつこと。他人の意見を頼りにするんじゃなく、自分の意見を築き上げていくこと。それが大切なんだから。だからこそ……オレらはオレらのやりたいようにやるだけさ。そ こにリスクがあるのは確かだ。でも、チャンスを掴むには、賭けも必要だろ?」(B・ リアル)。

サイプレス・ヒルがバリバリの現役としていまも活躍し、多くのアーティストやフ ァンたちからリスペクトされ続けている理由。それは、なによりも彼らが音楽に対するピュアで熱い気持ちを持ち続けているからなのかもな。

なお、実際にザックの後釜としてレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンに加入する話もあったというB・リアルは、現在デフトーンズやフィア・ファクトリーの連中と組んだカッシュ・プロジェクトというヘヴィー・ロック・グループでも活動中。マグスもセカンド・ソロ・アルバムを鋭意制作中だと言う。

ともあれ……サイプレスの新たな挑戦が詰まった『Stoned Raiders』、ぜひ聴いてみてくれ(ちなみに、現在好きなグループとして2人ともレディオヘッドの名前を挙 げていたことも付記しておこう)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月23日 21:00

更新: 2003年03月03日 22:56

ソース: 『bounce』 227号(2001/11/25)

文/萩谷 雄一