インタビュー

プリ・スクール

〈バンド・サウンド〉の新しい定義を示した快作『feel something?』が到着!!


 スタジオでセッションを繰り返したすえに生まれる格好いいグルーヴやアレンジもバンドの醍醐味だが、ハードディスク・レコーディングがごく普通のことになってからこっち、〈バンド・サウンド〉の幅は急激な広がりをみせ、それはより自由なスタンスでバンドに向かおうとする世代の増加を生み出すに至る。5人組バンド、pre-schoolの通算7枚目にあたる新作『feel something?』の制作方法は、そうした意識の変化を背景にしている。

「今回はメンバーで3チームぐらいに分かれたんですよ。だから僕もぜんぜんノータッチのやつもあるし、僕以外のみんながノータッチのやつもあるし。5人全員でやるっていう気持ちもあって、それもおもしろいものができるんだけど、そればっかだとやっぱり広がんない。前作(『First Heaven』)がそうだったのね。変わんないものも良かったんだけど、変わりたいなぁと思って」(大和田晃、ヴォーカル:以下同)。

 90年代初期のブラーやスウェードなどUKギター・バンドへのシンパシーからスタートした彼らの新しいフェイズ──大和田のジェフ・ミルズをはじめとするミニマル・テクノへの傾倒を契機に、バンド内で繰り返されてきた試行錯誤がひとつの到達点を迎えたともいえる本作で描かれるのは、こんなキーワードをもとにした世界。

「キーボードの佐藤(美恵子)さんがこのアルバムを作る前に〈次はデス・アルバムを作ろう〉って言ってたのね。詞は全部そうで、死をイメージしたっていうか」。

 ブレイクビーツを爽快なパンキッシュ・サウンドに採り入れながら、本作がどこか不穏な空気を全編に漂わせるのはそのせいで、チーム制を敷きながら結果的にはトータライズされた聴後感を与えることに成功しているとこも素晴らしい。『feel something?』によって、〈バンド・サウンド〉の新しい定義を示した彼らの次の行方が俄然楽しみになってきた。

「昔からそうだけど、どこに向かうわけでもなくさ、別になんにも決まってないんだよね。行っちゃうとこに行っちゃってたみたいな感じで、あとで気付くみたいな」。

 pre-schoolのさらなる進化を気楽に待とう。

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掲載: 2002年08月01日 13:00

更新: 2003年02月13日 12:14

ソース: 『bounce』 234号(2002/7/25)

文/内田暁男