インタビュー

Max Tundra

サプライズ! マックス・ツンドラの奇妙な世界

〈彼は僕が賛成できない多くのやり方で音楽を作っているのに、その結果生み出された音楽は、僕をこんなにも感動させる〉。

 この〈僕〉とは、いまやジャンルやカテゴリーを越えて活躍するアヴァンギャルド王、ハーバート。そして気になる〈彼〉とは、マックス・ツンドラことマーク・ベン・ジェイコブス。かのハーバートを感動(&嫉妬)させるほどの才能を持った男がいるというだけでも驚きだが、彼の新作『Mastered By Guy At The Exchange』を聴けばハーバートの気持ちもよ~くわかる。突拍子のない展開に、ねじれたユーモア、奇妙にして絶妙、憎たらしいほどポップ! 

「この新作を制作するにあたって、実にさまざまな楽器を習得したよ。サンプリングじゃダメなんだ。有機的にクリエイトされた音が入るほど音楽はユニークなものになる。それに僕はコントロール・フリークだから、ほかのミュージシャンとやるのは難しいんだ。いちばん興味深かった楽器は妹の声かな」。

 ここには何種類もの楽器(GAME BOYを含む)から、大英博物館の古時計、オーブンの扉の音までが集められ、マックス・ツンドラの調律のもとでスウィングする。そのサウンドをみずから「ヴァン・ダイク・パークスのジープがケリスのワーゲンに激突」と表現する彼。そこに溢れる好奇心と遊びの精神を感じて、どんな子供だったの?と尋ねれば、「うろたえてたね。でも性への目覚めは早かった」とニタニタ。歌詞に込められたブラックなユーモアについても「僕が単にファニーなだけかも」とシラを切る。とにかくこの新作にはマックス・ツンドラというユニークな個性、その匂いがたっぷり詰め込まれているのだ。

「信じがたいかもしれないけれど、このアルバムは僕がずっと思い描いてきたものなんだ。だからこの後どうしていいかわからないほど」。

 音楽から得られる最大なものとは「日本の見知らぬ人の笑顔」なんて言ってくれる彼。最後に日本のリスナーへメッセージをもらってみれば……。

「ぜひ僕の妹に会ってください」だって!

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掲載: 2002年08月08日 15:00

更新: 2003年02月10日 14:51

ソース: 『bounce』 234号(2002/7/25)

文/村尾 泰郎