インタビュー

The Music


〈踊る〉という行為。そして〈踊らせる〉という行為。〈踊る〉のはもちろん簡単なことだが、〈踊らせる〉のは容易ではない。これだけダンス・ミュージックが世界中に流れていても、やはり〈踊らせる〉ためには、ただならぬグルーヴ、独自の空気がないとオーディエンスは腰を振りはしない。そんななか、日本において2枚のEPを発表し、その確信に満ちたグルーヴと、若さからくる興奮がとぐろを巻いたサウンドで話題騒然のミュージックが、ついにファースト・アルバム『The Music』を発表した。

「デビュー・アルバムが完成して気分は最高さ! すべてうまくいったしね。ライヴの勢いもうまく入れることができたと思う。プレッシャーなんて何ひとつなかったよ。いいことしか思いつかないね!」。

ヴォーカルのロバート・ハーヴェイが興奮混じりでそう語るように、ミュージックの全貌がついにあきらかになったこのアルバムは、どうやらただならぬものになっているようだ。

「アルバムに特別なコンセプトなんてなかったよ。ただ4人で集まってバーッとセッョンをして曲を作ったんだ。僕らのソウルがひとつになるように、僕ら自身をしっかり表現するサウンドにしていくことだけに気を付けた」。

天にも昇るほど限りなくハイな“The People”、オーディエンスの腰を直撃し、〈踊らせる〉ナンバー、その名も“The Dance”など、これら中毒必至な快感ダンス・ビートは機械的に計算されたモノではなく、生身の人間を通過しているものだからこそ、一体化された4つのソウルが生々しく響いている。

「僕がダンス・ミュージックに興味を持ったのは最近のことなんだ。ドラムスのフィル・ジョーダンがケミカル・ブラザーズやレフトフィールドを教えてくれた。人を〈踊らせる〉っていうのはすごいことだよね。最高の気分にさせてくれる」。

加えてこのアルバムには、そんなアッパーなダンス・ナンバーばかりではなく、ブルージーなナンバーも収録されている。

「メンバーそれぞれがいろいろな音楽を聴いて育ったんだ。ジャクソン5、レッド・ツェッペリン、フリートウッド・マック……そのどれもが音楽の入り口だったんだ」。

ダンス・ミュージックばかりを聴いていた若者たちによって、この新しいグルーヴが作られたのではない。さまざまな要素と若さのエネルギーが絡み合い、ミュージックの骨格は形成されたのだ。

「僕にとって〈若さ〉っていうのは〈気付いていくこと〉。成長するためには、いろんなことを経験していかなきゃならない。そして混乱しても、自分自身を理解していかなきゃならない。だから問題が生じた時はチャンスなんだ。自分自身に問いかけて自分自身を知ることができる。自己認識、それってすごく大事だと思うよ」。

ミュージックの爆発するグルーヴを形成する〈若さ〉のエネルギーに迷いはないようだ。自分自身にケリをつけたうえで、「大好きなオーディエンスの笑顔、そこにあるピュアなソウルが好き」な彼らはライヴを重ねる。そしてみんなを踊らせる。そのサウンドはアメリカなどでも受け入れられそうだけど……?

「アメリカでの成功は考えたことないよ。僕らはあっちでもうまくやれそうだけど」。 

でも「日本は好きだよ」という嬉しい一言も。

「変な人間が集まってストレンジなことをやってるってのが〈ミュージック〉らしささ。メンバーそれぞれが一人で考え、行動し、それから4人が集まり語り合い、それぞれの表現を音楽でぶつけ合ってひとつになってるんだ」。

その結果、あまりにもピュアな自己表現方法として採られたポジティヴなグルーヴ。人々を踊らせ、それを見て自分たちも楽しむ。無邪気すぎる若者たちの、まだまだ進化するであろうこの新しいロックンロールが世界中に響き渡れば痛快だろう。

PROFILE

ロバート・ハーヴェイ(ヴォーカル/ギター)、スチュワート・コールマン(ベース)、アダム・ナッター(ギター)、フィル・ジョーダン(ドラムス)によって、イギリスはリーズの郊外、キパックスにて99年に結成される。2000年にインディーよりシングル“Take The Long Road And Work It”でデビュー。ハイスクールを卒業した彼らはすぐさまメジャー契約を果たし、2001年にはセカンド・シングル“You Might As Well Try To Fuck Me”をリリース。2002年には初の全英ツアーを成功させ、サード・シングル『The People EP』を発表。4月には早くも単独で初来日を果たした。期待が高まるなか、待望のデビュー・アルバム『The Music』(Hut/Virgin/東芝EMI)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年08月29日 12:00

更新: 2003年02月10日 13:15

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/米田 貴弘