インタビュー

ROCKING TIMEに通じる普遍的〈歌モノ〉マスターたちを紹介!

 ジャマイカにて60年代後半にスカとレゲエの間に咲いた、スウィート・リズム・ミュージック、ロックステディー。ROCKING TIMEはそんなルーツに留まることなく、新作にてより広範囲な音楽ファンを虜にするであろう〈歌モノ・バンド〉としての魅力を輝かせている。そんな側面に通ずるバンドとして真っ先に挙げたいのがフィッシュマンズ。彼らのファースト・アルバム『Chappie, Don't Cry』のプロデューサーが、ROCKING TIMEのファースト・アルバム『ロックステディ』と同じくこだま和文であるということは偶然以上の意味を感じずにはいられない。後にROCKING TIMEが、フィッシュマンズのベーシストであった柏原譲の在籍するPolarisと共演したときには、歌を媒介にして(おおげさに言えば)歴史の何かが繋がったような感動を覚えたり。またROCKING TIMEは数々の名演カヴァーを残しているが、なかでも秀逸なのがファースト・アルバムに収録の坂本九“涙くんさよなら”のカヴァー。今野の歌声に坂本九を見い出すことは容易だし、ジャマイカン・ミュージックと昭和の歌謡曲がリンクした瞬間、それこそROCKING TIMEが普遍的な歌モノ・バンドとして輝きだしたきっかけかもしれない。そして忘れてはならないのが今野の歌世界に張り付く〈男のエレジー〉。それは友達でもあるというネタンダーズの塚本功が紡ぐものと同質のブルース──〈うまくいかない〉と呟きながら口ずさまれる都市生活者の歌である。類い希なソングライターでもある今野英明はこれからどう成長するのだろう? それを考えるうえで、どんとの追悼イヴェントに参加した彼の姿はそのヒントのひとつかもしれない。つまり彼同様、〈歌〉をよりプリミティヴに研摩していくであろうことは間違いない(と思う)。

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掲載: 2002年09月05日 11:00

更新: 2003年02月13日 12:13

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/内田 暁男

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