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インタビュー

The Used

多彩なキャラクターがしのぎを削るヘヴィー・ロック・シーンに、あらたなスタイルで武装したバンドが誕生!! ユーズドが鳴らす〈スクリーモ〉とは、果たして……


ラップ・ヴォーカルを主軸としたヘヴィネスとは違った毛並みのバンドが、最近次々と登場しているのはご存知のとおり。ラウド・シーンに新たな流れが出来つつあるということなのかもしれない。我が国でもお馴染みなところでは、すでに来日公演も果たしているフィンチあたりか? あるいはロス・ロビンソンの秘蔵っ子であるグラスジョーも80年代ニューウェイヴへの愛情を色濃く反映したネオ・ヘヴィネスを発明して爆走中だ。誰が名付けたか、これら新勢力を〈絶叫エモ=スクリーモ〉と呼ぶ動きもあるようだが……まあいい。とにかく興味深いバンドが出てきていることは、音楽ファンとして注目すべきところ。そしてこのユーズドこそ、とんでもない行く末を確信させてくれる連中なのだ。

ユーズドはアメリカのド田舎、ユタ州で結成された。敬虔なモルモン教徒が住民の大多数を占めるこの地で、バンド活動を続けるのは並み大抵の苦労ではなかったようだ。

「地元のクラブは大半がカレッジ系中心でさ、俺たちみたいなのは出られる場がなかったんだよ。その反動で俺たちはひたすら曲を書いて、自分たちの音楽のスタイルに磨きをかけることに力を注いだんだ」(クイン・オールマン、ギター)。

そして培われた彼らの必殺サウンド。それはまばゆいばかりの変態ぶり! 片足はロックンロール、パンク・ロックへ深く突っ込みつつ、もう一方の足で変拍子をクネリユラリと刻み、あるいは唐突に行き先のわからない曲展開へと駆け出していく。いや、この程度ならばUSハードコア/エモの一定の類型に収まるといえるだろう。しかし注目すべきは、暴れ、のたうちまわり、涎をいくら垂れ流そうとも、彼らは不思議と美しく光り輝くのだ。怒号とディストーションが渦巻くヘヴィネスに絡まり、哀愁のメロディー、叙情のハーモニーを展開していく。呆然! 恍惚!!

 彼らのデビュー・アルバムとなる本作『The Used』において、その独自性が顕著なのは“Blue And Yellow”。ギターのクリアなトーン、ファルセットを多用したヴォーカルは、やがてフィードバックとスクリームで緊張感を添加されたクライマックスへと突入していく。また、“Greener With The Scenery”でのストリングスと不穏なビートで描き出される壮大なオーケストレーションも、桁外れの破壊力を感じさせる。参考までに彼らが聴いてきた音楽について訊いてみたのだが……。

「俺たちはみんな、いろんな音楽が好きでね。俺自身はフェイス・ノー・モアとかスノットとか、セパルトゥラ、ニルヴァーナ、ミスター・バングル、それにジェイムズ・ブラウンなんかを聴いて育ったよ」(ジェフ・ハワード、ベース)。

 JBはともかく、ラウド・ミュージック好きとしては、いたって普通の嗜好だ(喧嘩を売る気はないが……)。ユタ州においてマニアックな音楽を探そうとしても、手立てはまったくなかったのではないかと思う。だが、それでも肥大し続ける刺激的な音への欲求。これが図らずも彼らの独自性を熟成させたのではないだろうか。そして今、溜まりに溜まったエネルギーは一気に噴出する場を与えられつつあるのだ。今年の〈Warped Tour〉や〈Ozzfest〉で諸手を挙げて大観衆に迎え入れられたのは、幸先の良いスタートであった。だが、本領発揮はまだこれから。本作を期に、彼らの黄金時代が到来するのは約束されたようなものだろう。先述の唯一無比のサウンド、それがメストのプロデュースで名をあげたゴールドフィンガーのジョン・フェルドマンの手によって、効果的に封じ込められた一枚。聴けば聴くほど彼らのステージを実際に目の当たりにしたくなる仕上がりでもある。

「ライヴをとことん極めたいんだよ。ラウドでハードで、エナジーとエモーションが目一杯詰まってるような。できる限り大勢の人たちの前でプレイしたいし、俺たちの生きてる時間をみんなと分け合いたいんだ」(ジェフ)。

 先行シングルとなった“A Box Full Of Sharp Objects”のプロモ・クリップで、彼らのステージの模様を確認できるのだが、壮絶、そして衝撃だ。なにしろヴォーカルのバート・マクラッケンはシャウトのし過ぎでゲロってる……この先どのような姿を曝してくれるかはまだわからないが、彼らへの興味は増すばかり。進撃ぶりに要注目なのだ。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年02月20日 15:00

更新: 2003年02月20日 15:54

ソース: 『bounce』 239号(2002/12/25)

文/田中 大