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インタビュー

CHARA

〈女性的〉なポップ・ソングって、いったいどんなもの? 可愛らしいルックスをも武器に男子のハートを揺さぶるもの(大歓迎!)――それもひとつ。傷ついた心の深奥をさらけ出し、それを聴き手と分かち合うもの――それもひとつ。そして、ごくごく普通の呼吸で音を紡ぎ、近い目線で愛を、日常を語ってくれるもの――たとえば今回、時をほぼ同じくして届けられたCHARA、YUKIそれぞれの新作――も、なくてはならないひとつの形ではないだろうか?

〈味〉な感じ



「去年は曲書き、レコーディング、あとライヴ……以上、みたいな。年末年始は仕事しないし、土日もお休み。4月近辺は子供が小学校に上がったばっかりだったし、夏休みもある。仕事は基本的に水木金で時間も決まってたんだけど、1時間早く帰りたかったから、昼の1時~夜の7時までにしてもらう代わりに月火も出たりとか。でも、こういう仕事って時間どおりに終わらないものだから、そのときは家族に協力してもらってます」。

 生活と音楽。音楽とCHARA。その境目は明確に区別できるものではないけれど、CHARAのニュー・アルバム『夜明けまえ』は、2児の母にして浅野忠信の妻でもある音楽家の知られざるプライヴェート・タイムを意識させる、そんな作品である。

「もちろん、身近なところで家族の影響を受けてはいるんだけど、私も含め、ホントにそうなのかは誰にもわからないんじゃない(微笑)? 今回は、いつもデモテープ作りでやってたように、自分でいろんな楽器を弾きながら歌った〈味〉な曲が多いんだけど、その味な感じと、私の曲で多い(BPM)74っていうゆったりしたテンポが日常に近い印象を与えるのかもしれないし(笑)」。

 と、穏やかな語り口ながら、距離感を計って言葉を選ぶ彼女。明け透けなわけでも、突き放すわけでもない、この微妙な温度感こそがつまりは本作のムードなのだ。だから、このアルバムは母であり妻である彼女や彼女を取り巻く日常の空気を含んではいても、それがことさらに強調された作品ではないことをまずは踏まえていただきたい。だが、そうした前提に立ってなお、プロデューサーにホッピー神山と清水ひろたかを迎え、奇跡的なまでにナチュラルな佇まいをみせる本作は、ふだんは目にすることのない彼女の内面を伝えているように思える。

「今回は初期衝動を大切にしたというか、最初にあったデモテープから作り込みすぎないようにっていうことを心掛けて。仮にそこからイメージが広がっていったとしても、あえて〈いいや、これくらいにしとこう〉っていうことが多々ありましたね。ただ、デモテープを人に聴かせるのは(デビューして)12年目なのでだいぶ慣れたとはいえ、勇気がいるわけです。そこで、自分を守るためにもっと強くなんなきゃいけないなっていう気持ちを持つことと、レコーディング前にスタッフと話し合うことができたことは大きな影響を及ぼしていると思います。なにせ12年目なんでね(笑)、ここらへんで解放してあげるというか、1回リセット!って感じではあったかもしれない」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2003年03月27日 15:00

更新: 2003年03月27日 15:52

ソース: 『bounce』 241号(2003/3/25)

文/小野田 雄