YUKI
〈女性的〉なポップ・ソングって、いったいどんなもの? 可愛らしいルックスをも武器に男子のハートを揺さぶるもの(大歓迎!)――それもひとつ。傷ついた心の深奥をさらけ出し、それを聴き手と分かち合うもの――それもひとつ。そして、ごくごく普通の呼吸で音を紡ぎ、近い目線で愛を、日常を語ってくれるもの――たとえば今回、時をほぼ同じくして届けられたCHARA、YUKIそれぞれの新作――も、なくてはならないひとつの形ではないだろうか?
外に向かって歌いたい!
「自分のことをとっても書いちゃって、自分に向かっての歌もあったし、すごく個人的なアルバム」。
そんなふうに振り返るのは、YUKIのファースト・ソロ・アルバム『PRISMIC』。ちょうど1年前に発表されたその作品は、当時のそんなモチベーションが物語るように、それまでの彼女――つまりはJUDY AND MARYのヴォーカリスト――が歌っていた歌とは、あきらかに違う印象を与えてくれた。より生々しく、より女性的で、より力強い歌は、かつての彼女が、ティーンのアイコンとして崇められていたようなヴォーカリストであったことを思い起こせば、それはなおさら身に染みるものであった。
そして1年。このたびYUKIのセカンド・アルバム『commune』が届けられたわけだが、アルバムの話を訊く前に、『PRISMIC』発表以降でリリースされた最初のシングル“スタンドアップ!シスター”の話から始めようと思う。なぜなら、その楽曲から伝わるもの(体温や匂いとでも表現すべきか)は、これまでのソロ作品のなかにあってすごく新鮮であったし、YUKIが確実にネクストに続くドアを開いたであろうことを実感させるものであったからして……。
「その実感はね、すごく自分でもあったんですね。デモをもらったのが『PRISMIC』のあとのツアー中だったんですけど、とにかく気に入ったんですよね。それで、PRISMIC YUKI BANDっていう、ツアーを廻っていたバンドといっしょに録ろう!と思って。……話が前後しちゃうんですけど、『PRISMIC』みたいな(個人的な)アルバムを作ってツアーに出たとき、〈もっと違う、もっと外に向かって歌いたい!〉っていう気持ちが強くなってて。あと、友達が恋に悩んでたりしててですね、その友達を元気づけたいなって気持ちがちょうどリンクしたりとか。外に向かってもっと……女性として強くなれっていうのとは違って、もっと普通に、女性として可愛らしく、女性なりに頭を使って……悩んでた友達とも、〈もっとうまく愛されようよ〉とかって話してて。男性にモテるって、いいことだと思ってるし。そんなこともあったので、デモをもらったとき、すぐに〈スタンドアップ!シスター〉って言葉が出てきて。自分でもホント、こういう歌を歌えてうれしいなって思いました。身近な人たちもすごく新鮮に思ってくれて」。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2003年03月27日 15:00
更新: 2003年03月27日 15:52
ソース: 『bounce』 241号(2003/3/25)
文/久保田 泰平