LABCRY
平凡な日常のなかで感動できる音楽を求めているなら、迷わずこのアルバムを手にしてほしい!──LABCRYのニュー・アルバム、その名も『LABCRY』が到着!
つい最近、飛行機に乗って、機内でウォークマンを聴いちゃいけないことを知りながら客室乗務員に隠れてLABCRYの新作『LABCRY』を聴いた。飛行機は空港めざして旋回しているところで、窓の外には港、街、船。そんな時、雲を突き抜けながらの1曲目“ハートのビート”はまさに快感! 目の前の霧が開けていくようなこのオープンなナンバーは、LABCRYというバンドが新しいフェイズに移ったことを告げるキラー・チューンだ。〈僕の部屋で生まれた女神〉に向けて〈はみだしてしまった者達の為に〉祈る歌。つまりこれは、LABCRYのテーマみたいなもの。
「まさにそうなんですけど、あんまり声高に言うの、照れくさいんですよね(笑)。でも、言わなきゃね、そういうことは。言って自分を追いつめないと」(三沢洋紀、ヴォーカル/ギター:以下同)。
大阪を拠点にゴーイング・マイ・ウェイな音楽活動を繰り広げてきたLABCRY。「ロックの女神さまに捧げるくらいの気持ちで作った」この新作は、初のセルフ・タイトル作品にして、彼らのすべて(ホントに全部!)が詰まった素晴らしいアルバムだ。メンバーの笑顔とソウルが溶け合ってメロディーとなり、匂いとなって聴く者を抱きしめる。
「迷いのないバンド像っていうか、そういうものが今回できたんじゃないかなって。これまで6人でやってきたことが、ドカーンと爆発したかたちでできるような予感がしてた。その予感は僕だけじゃなくて、みんなにもあったみたいで。だから自然にセルフタイトルに落ち着いた」。
清水恒輔(ベース)、村上ゴンゾ(シンセサイザー、エフェクト)、宮地健作(キーボード)、斉藤晃彦(ドラム)、NANA(ギター)、そして三沢の6人が「〈LABCRY〉って家を借りてて、合い鍵を持ってるみんながそこにわらわら集まるって感じ」で創り上げた本作。三沢の柔らかなヴォーカルにNANAのギターがザクザク絡む“SUGAR SONG”、宮地のシャボン玉みたいなキーボードに導かれて、やがて大きな歌がうねり始める“青き病み”、二日酔いのサン・ラーみたいなヨタついたグルーヴ感がたまらない“MONEY GURU”……どれをとってもLABCRYという〈生き物〉の躍動を、〈ハートのビート〉を感じることができるだろう。
「(LABCRYは)妄想都市を生きるための音楽だと思う。憧れや想いが詰まってるんですよ。例えば小さい頃に聴いた佐野元春やオフコース。その時感じたワクワク感を今回取り戻したかった」。
そんな憧れの心象風景で組み立てられたサウンドは、まるでジオラマ。バンド・カラーといえるゴンゾの作り出す独特のノイズ・エフェクトが、そこに不思議な奥行きを与えている。そして今回、その風景を染め上げるのは〈淡いブルー〉だ。
「ブルーは、このアルバムのトータル・カラー。僕の内面のカラーでもあるし、聴く人によっていろんなブルーが拡がっていくんじゃないかな。暗いブルーだったり、明るいブルーだったり、ブルースのブルーだったり。僕にとっては〈ひとり〉のブルー。僕は片親だったりして、ずっとひとりでいる子供だった。だから寂しい、ってのはないですけど。でも、その時に聴いた音楽が僕を形作ってると思う」。
理想のバンドにスライ&ザ・ファミリー・ストーンを挙げ、“Runnin' Away”を鼻歌まじりに歌ってみせてくれた三沢。〈ア、ハッ、ハ、ハ~♪〉なんてコーラスの呑気さを愛するその横顔に触れたとき、LABCRYの前々作のタイトル『平凡』がスライの『Life』と重なって見えた。つまり、LABCRYの歌は、日々の生活の喜びを掬いあげるエヴリディ・ミュージック。だからこそシュガーで切なくて……。
「シュールで笑っちゃうようなね。〈あー、しかたないな、アハハハハ〉みたいな。生活の音楽だけどすごく変。でも、音楽にめぐり会うことなく生きてきて、日々汗水垂らして働いてる人たち、そんな人たちに〈いいな、コレ〉って思われたい。そういう意味で、ひとつの希望のようなアルバムができたと思ってるし、だから胸を張っていたいなぁと、今まで以上に」。
シング・ア・シンプル・ソング! この無敵の晴れやかさ。LABCRYは今、LABCRY史上、最高にLABCRYだ。
▼LABCRYのアルバムを紹介。
97年の『A MESSAGE FROM THE FOLK-RIDERS』(OZ DISC)
98年の『COSMOS DEAD』(OZ DISC)
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