Bloodthirsty Butchers
新メンバー加入で新章に突入したbloodthirsty butchers。このたび届けられたベスト盤と、4人での初音源となるライヴ・ベスト盤は、彼らの足跡の大きさと、これからの期待感を十分すぎるほど感じさせてくれる作品だ!
結成から15年。このたび、bloodthirsty butchers(以下、ブッチャーズ)の歴史をコンパクトにまとめたベスト盤『blue on red』と、新メンバー、田渕ひさ子(ギター)加入後のライヴ音源に新録スタジオ・ライヴ音源4曲を加えた『green on red』がリリースされた。
パンクに始まって、ソニック・ユースやダイナソーJrなど、USオルタナティヴ・シーンと同調するサウンドを構築しながらも、そこに込められた熱量+愛+得体の知れない〈なにか〉によって、独自のロックンロールを響かせ続けて現在に至るブッチャーズ。今回、ベスト盤『blue on red』で振り返ることになるその軌跡は、なにやら長い旅の記録を見るようで、その様は「銀河鉄道999」(原作・松本零士)の物語を想起させてやまない。機械の身体=永遠の生命を求めて旅を続ける主人公が、道中で出逢うさまざまな体験のなかで、〈生命〉とは〈生きる〉とは何か?を考え……という物語の本筋にも印象が当てはまるのだが、結成当時から同じような場所にいて同じような姿を見せながら、たくましさはものすごく増していて……なんてところは、あの物語の結末を思い出す。
「なにかを志して、そこに向かうなかでいろいろとブチ当たるじゃないですか。いろいろ見たり聞いたりしながら〈俺って間違ってるんじゃないか? いや、間違ってない〉とか葛藤があったり。そうやってずっと過ごしているから、現実の、いまの自分しか残らないんだよね。葛藤し続けているから、リアルなものしか残らない」(射守矢雄、ベース)。
「〈同じ場所にいる〉っていうのは否定できないというか……でも、同じところにいるっていっても、同じ部屋に〈閉じこもってる〉っていうのとは違うと思う。〈旅してる〉じゃないけど、いろいろ見て回って、自分のやりたいことや好きなことは変わらないって思うんだけど、いろんな部分が膨らんでるというか」(小松正宏、ドラムス)。
「バンドを作って〈これだ!〉と思ったら、余程のことがない限り止めようとはしないし、周りからは止めたと見えてても進んでるというか、自分のなかでは〈ここで終わり〉っていうのはないわけで、そう思ってやってるから……かも知れないですね」(吉村秀樹、ヴォーカル/ギター)。
そんなふうに〈終わりなき旅〉を続けるブッチャーズだが、今年の2月にひとつ転機を迎える。田渕ひさ子の加入だ。
「『荒野ニオケル bloodthirsty butchers』のレコーディングにゲストで来てもらって、そのリリース日のライヴにも……。で、そのときのライヴの感覚がすごく良くって。意外と自然だったし、これからもいっしょにやっていけそうだなと思って誘ったんですよ。〈△〉って言ってたぐらいだから、3人バンドっていうこだわりもあったんだけど、そこで堅い考えというか……本当は守っていかなきゃいけない部分なのかも知れないけど、それすら外れちゃったんですよね。言葉では説明できないぐらい〈いい感じ〉だったし」(吉村)。
これまで〈△〉を貫き通してきた彼らが〈□〉になるということは、かなりの驚き……ということよりも、ここはむしろ、解散したナンバーガール同様に、全員主役のバンドのなかでまたもギター・ヒロインを張るべく加わった田渕の〈意気〉を讃えたい。
「〈意気〉って言われることもうれしいですけど〈入らない?〉って誘ったほうもすごい(笑)。十何年も3人でやってきて、いきなり変化できるほうもすごいと思う」(田渕)。
「おもしろいのは、さんざん十何年も3人で演ってきた昔っからの曲とか、いちばん動じないで弾けちゃうのがチャコちゃん(田渕)だったりするんだよね。こっちのほうが〈お、お、〉ってなってるのにね」(小松)。
「感覚的には〈へぇ~、15年もやってるんだ、この4人組は〉って感じ。3人での感覚を忘れてるつもりはないんだけど、あえてそれを思い出してそれをどうこうっていう意識すら湧かないし、これであたりまえという」(射守矢)。
「4人で音を録ってみて、曲が真新しくなったわけでもないんですよ。意外とそのまんまじゃん、いけるじゃんっていう。望んでない変化はないというか、あたりまえのようにあって。自分たちのなかでは昔よりはいいと思ってるわけで、それを確認できましたね」(吉村)。
長い活動歴を経てもなお、まだまだ頼もしさを感じさせてくれるブッチャーズは、「同じ人数がいて同じアンプの数があっても、この音は出ないだろうなって」(田渕)なんていう、これまた頼もしい新メンバーの〈自信の言葉〉とともに、16年目のシーズンを迎えようとしている。
▼bloodthirsty butchersの入手可能なアルバムを紹介。
カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2003年09月25日 14:00
更新: 2003年09月25日 16:37
ソース: 『bounce』 247号(2003/9/25)
文/久保田 泰平