至高のヴォーカリスト・アルバム8撰
SADE 『Lovers Rock』 Epic(2000)
8年というインターヴァルを経てリリースされたアルバム。良い意味でこれまでの作品の延長線上にあり、特筆するほどの大きな変化はあまり感じられない。それは変わる必要のないほどに普遍的、無意識に溢れて出る彼女自身のアイデンティティーが確立されているがゆえの産物だからと言えるのではないか。
GEORGE MICHAEL 『Ladies & Gentlemen The Best Of George Michael』 Columbia
シールのカヴァー“Killer”やワム!時代の名曲“Careless Whisper”までを網羅した2枚組のべスト・アルバム。世間を騒がせてきたゴシップだけではないシンガーとして、またアーティストとしての天賦の才を堪能するには十分すぎる内容。
TORI AMOS 『Scarlet's Walk』 Epic(2002)
〈ひとりの女性がアメリカを旅する〉というコンセプトによって綴られたアルバム。繊細でありながらも淡々と歌われる一篇一篇に、彼女の女性/母親としての強さや、ネイティヴ・アメリカンである自身のルーツなどが、現在のアメリカというフィルターを通して描かれた強さ溢れる作品。
HORACE ANDY 『Skylarking』 Melankolic/Virgin
マッシヴ・アタックとのコラボレート(本盤にも2曲を収録)でも知られるレゲエ界の大御所、ホレス・アンディのベスト・アルバム。シンガーとしての実力以上に新たな可能性を感じさせるその声は、ハイトーンながら内省的。しかし秘めたるパワーを聴き手に与える手腕は見事である。
ANNIE LENNOX 『Bare』 RCA(2003)
スケールを増したその存在感やリリカルな詞世界は唯一無二のもの。ユーリズミックスやソロとしての活躍……そんな先入観をなくして聴いても、ハスキーでありながら癒し効果のあるヴォーカルにトリコとなるのは必至。いまだライフスタイルを含んだファッション・リーダーとしても輝き続ける。
DES'REE 『Dream Soldier』 S2S(2003)
声は太くハスキーながら、爽やかささえ漂うリアルなナチュラル・フィーリングは天性のもの。我が国での“Life”のヒットを経てリリースされた本作は、必ずしもポジティヴとはいえない歌詞の世界と希望に満ち溢れているメロディーとの取り合わせの妙が、傑作との呼び声を確信させる。
MACY GRAY 『The Trouble With Being Myself』 Epic(2003)
単なるオーガニック・テイストのソウル・シンガーだと思っていては、彼女の魅力の半分も捉えていないといえる。〈ジャンルレス〉なんて言葉は安売りしたくないが、プリンスにも匹敵する独創性/ヴォーカリストとしての存在感は否定できないものがある。
MICHAEL BOLTON 『Vintage』 ADA(2003)
先ごろリリースされたばかりの今作は、スタンダード・ナンバーを中心としたカヴァー・アルバム。ボルトンが持つ類い稀なソウル・フィーリングは、正当に評価されてしかるべきであると思う。エルヴィス・コステロでお馴染みの“Smile”ほか、聴きどころ満載。
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