インタビュー

Jamie Cullum

現在24歳のピアノマンがイギリスで話題沸騰中。彼のハスキーな歌声に世界が酔いしれる時が来たぞ!!


 歌良し、ピアノ良し、ルックス良し。今イギリスのメディアを色めき立たせているのがこの青年、ジェイミー・カラム君だ。その確かな実力と甘いマスクから〈ジャズ界のベッカム〉なんて称されることもある彼は現在24歳。フランク・シナトラのナンバーやレディオヘッドのカヴァー、オリジナル曲などを収録した自主制作盤『Pointless Nostalgic』がインディ-・レーベルの目に留まり、今作が店頭に並ぶやいなや瞬く間に大ヒットを記録。一躍スターダムへと躍り出たシンガー/ピアニストだ。

「年齢的に古い世代のための音楽というイメージがジャズにはあるけれど、だからこそ僕は惹かれた。大人の音楽をやってみたかったんだよ。今より若い時は特にね。友達の誰もこういった音楽をやっていないっていう、ある種の優越感というかさ」。 

 ロックやヒップホップに感じるクールネスをオールドタイミーなジャズからも同じように感じるというジェイミー君だが、ノスタルジックな音楽への憧れを素直に表現したオリジナル曲と、現代を生きる若者らしい幅広い音楽嗜好を活かしたプレイ・スタイルを併せ持っているところもまた彼の魅力のひとつだ。メジャー・デビュー作となる新作『Twenty Something』でもオリジナル曲はもちろん、往年のヴォーカル・スタンダードから斬新なアレンジを施したオールド・キャバレー・ソング、ジミ・ヘンドリックスやジェフ・バックリ-のカヴァーまでを披露している。

「10代の前半はニルヴァーナやメタリカ、レイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)なんかが好きだったんだ。でも、その頃やっていたヘヴィー・メタル・バンドは最悪だったな(笑)」。

 そうテレる彼がジャズに興味を持ちはじめたのは15歳の頃。

「だんだんメロディアスな音楽に興味が湧いてきて、シンガー・ソングライターものをいろいろと聴き漁るようになったんだ。同時に楽器のテクニックにも強い関心があってね。ジャズとかアシッド・ジャズ、ヒップホップなんかはそういった面での欲求を満たしてくれたから、僕の関心は次第にそっちに移っていったんだ」。

 アシッド・ジャズを聴きはじめたジェイミー君は、そこで彼らが影響を受けたというハービー・ハンコックをはじめとする70年代のジャズを発見し、今度はそのハービーが聴き込んでいるというマイルス・デイヴィスの作品を辿っていくことになる。そんなルーツ巡りの旅が、レディオヘッドやジミヘン、ジェフ・バックリ-とオールド・ジャズを等しく〈音楽〉として捉える柔軟な感性を養っていったのだろう。「ジャズ・クラブに足繁く通うようになったのもその頃」と話す彼だが、ジャム・セッションを繰り返し、自分よりもひと回りもふた回りも年上のミュージシャンたちと交流を深めるなかで、どんどんジャズにのめり込んでいくことになる。

「ジャズにハマる前にやっていたロック・バンドでは、ベースとしては自由な音楽があるはずなのに音楽的にはかなり制限があった。ヒップホップやポップスでさえ僕にはそう感じられたんだ。ところがジャズにはいろんなことを試してみたり変えてみたり……といろんなことが可能だった。それが僕にはとても魅力的に思えた。ジャズという音楽のなかにポップスやロックの要素を持ち込むことも可能だしね。そんなジャズの雑種性に強く惹かれたんだ」。

  アルバムのなかで、そしてステージで、彼はその〈雑種性〉を体言してみせる。甘くハスキーな歌声でいにしえのジャズメンよろしくセクシーに迫ったり、ロックの持つワイルドさやヤンチャっぷりを垣間見せたり。「ジャズ・ミュージシャンとして捉えられるのは嬉しいけれど、根本的には自分はシンプルに〈ミュージシャン〉」だと彼は話す。

「実際にジャズの世界で起こっていることと、周りに写るイメージには落差がある。僕はジャズは他の音楽よりずっと入りやすいと思う。音楽にあるそういった面を僕は破壊しようと努めてるんだよ。閉鎖的なイメージを拭い去り、さまざまな種類の音楽を加えてユーモアを織り交ぜながら、いろんな人に聴いてもらおうと努力しているんだ」。

 あどけなさの残る顔立ちからは意外ともとれるほどの骨っぽい発言。

「このアルバムをいろんなタイプの人に聴いてもらいたいね、もちろんジャズ・ファンを含めて。ジャズを聴いたことのない人や、そこらへんの道を歩いてるようなごく普通の人。1年にアルバムを5枚くらいしか買わない人たちにも聴いてもらいたい」。

 僕もまったく同感です。

▼ジェイミー・カラムが新作のなかでカヴァーした楽曲のオリジナル収録作品を紹介

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掲載: 2004年02月05日 13:00

更新: 2004年02月05日 19:02

ソース: 『bounce』 250号(2003/12/25)

文/吉村 健