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インタビュー

Michael Buble

敏腕プロデューサー、デヴィッド・フォスターと共に世界へと羽ばたこうとしているマイケル・ブーブレ。スタンダード・ナンバーに新たな息吹を与える甘い歌声は必聴!!


 めざとい人ならもうチェック済みだろうか。カナダ、ヴァンクーヴァー出身の28歳。大注目のシンガーである。その名も……。

「〈ブーブレ〉って発音するんだ。過去のスタンダード・ナンバーからジョージ・マイケルの“Kissing A Fool”やビージーズも歌うよ」。

 母国はもちろん、欧米でも大ヒットを記録し、このたびやっと日本でもリリースされる実質的な世界デビュー作『Michael Buble』には彼の発言どおり、特定の時代に縛られないスタンダードな楽曲が並んでいる。例えば、ペギー・リー、ヴァン・モリソン、ポール・アンカ、クィーン、そして、彼のルーツであるフランク・シナトラやナット・キング・コール。

「7歳ぐらいの時、家でビング・クロスビーが流れていたんだけど、その頃から彼のようなスタイルが大好きだった。おじいさんの影響でね。ロックや今の音楽も好きだけど、ミルズ・ブラザーズを聴いた時は魔法にかけられたようだった。僕は歌手になりたかったし、歌いたい音楽はこれだって思ったんだ。僕の世代が忘れかけていた音楽の世界を彼が開いてくれたんだよ」。

 そんなルーツを持つマイケルは、タレント発見番組への参加を経て、地元カナダで何枚かのアルバムをリリース。ミュージカルにも出演した経験もあるという。そして、ある時運命的な出会いをする。知人の結婚式でマイケルが歌っているところを観ていたのは、なんとデヴィッド・フォスター。パフォーマー/ソングライターにして、80年代以降最大のヒットメイカー。シカゴ、ホイットニー・ヒューストン、コアーズなど、その栄光は数知れず。

「彼は憧れの存在だった。本当にラッキーだったね。LAに招待してくれて、プロデュースしてくれることになったんだ」。

 そして、その〈憧れの存在〉であったデヴィッドもこう続ける。

「マイケルはジャズと共に育ってきた。同世代の若者がニルヴァーナやパール・ジャムを聴いていた時、彼はボビー・ダーリンやルイ・プリマを聴いてたんだ。でも彼は単にコピーするんじゃなくて、そういったジャンルすべてのアーティストの要素を採り入れた音楽を創造しているんだ」。

 なるほど。非常にコンテンポラリーだが、ある種クラシカルで聴き手を選ばない今作の秘密は、このあたりにあるのかもしれない。マイケルがリアルタイムで聴いてきたポップスと、彼が継承した、おじいさんにとってのリアルタイムなポップスが、デヴィッドの手によって並存した音楽……。デヴィッドは今作についてこう語る。

「このアルバムは普通とは違ったアプローチをいろいろとしてみた。つまり、60~80年代に書かれた曲を40年代っぽい音に仕上げたんだ。ジョージ・マイケルの“Kissing A Fool”は80年代に残された素晴らしいナンバーなんだけど、これに40年代のスパイスを効かせてみたんだ」。

 一方マイケルは 、「僕が想像もしなかった作品にまで成長した感じ。こんなの聴いたことがないからね。ジャズのようなタイプの音楽の素晴らしさを活かした作品で、かつコンテンポラリーな曲をやりながらも、誰かのアイデアを盗むこともしなかった」と話す。このアルバムは時間軸をある意味無化するような、レトロ・フューチャーな雰囲気を持った作品なのである。最後にマイケルはこう話してくれた。

「若い世代にもウケると思う。でも、7歳でも70歳でも気に入ってもらえると思うよ。それぞれ気に入る要素は違うだろうけど、みんなにグッド・フィーリングになってもらえると嬉しいね」。

 キーワードは音楽のジャンルではなく、老若男女に通じる〈スウィング〉という様態そのもの。己の〈スウィング〉であらゆる曲を自分のものにすることができる稀有な才能。本格派〈歌手〉の登場です。

▼デヴィッド・フォスターのプロデュース/アレンジ作品を一部紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年02月05日 14:00

更新: 2004年02月05日 19:02

ソース: 『bounce』 250号(2003/12/25)

文/木村 優宏