インタビュー

ムームの多彩な表情を、周辺人脈から検証してみよう!

 〈穢れを知らない、無垢な少女のいたずらな狂気〉──ムームの生み出す音楽は、犯してはならない聖域を意図的に瓦解させてしまうような〈相反する魅力〉を孕んでいる。ムームの顔であった双子のアンナ姉妹が登場したベル・アンド・セバスチャンの4作目『Fold Your Hands Child, You Walk Like A Peasant』のジャケは2人のイメージを的確に表現していた。それは夢野久作や谷崎潤一郎が描く少女の魔性や、グリム童話に潜む暗黒部分のような〈可逆的エロティシズム〉にとても良く似ている。そして、神秘的なムームの音楽性を育んだアイスランドには、産業革命の波に呑み込まれずに、自然の豊かさを頑なに守り抜いた〈原ヨーロッパ〉的な空気が息づいている。それはおたがいの最新作で優れたサウンドの互換性を示し、ムームのツアー・ドラマーも務めた同郷の俊才アダム・ピアースのマイス・パレードにも確認することができるし、レーベルメイトであり、自分たちのスタジオを提供する仲でもある同郷のシガー・ロスにも、中世から受け継がれる〈リミュール〉という詩歌に強い影響を受けている点からも認識できる。プロデューサーに名を連ねて話題となったACOの『irony』にはムーム・サウンドの持つ少女性や母性が、フランスのメロディアス・エレクトロニカの代表格、M83とのコラボレーションでは秘めたる狂気を感じさせる。この〈相反する魅力〉に、多くの人々が心を奪われてしまったのだ。そしてアナタも、その一人になるのかも?

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年03月25日 14:00

更新: 2004年03月25日 16:56

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/冨田 明宏

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