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インタビュー

大西ユカリと新世界

サーヴィスしまっせぇ! 21世紀の大阪名物、浪花のソウル歌謡クイーンがもてなす三部作完結編!


 サンガリアの〈みっくちゅじゅーちゅ〉が大阪の〈喫茶店の味〉を標榜するならば、大西ユカリと新世界のサウンドは、ズバリ大阪の〈食卓の味〉だ。ソウル、リズム&ブルース、ゴスペルから昭和歌謡までをグツグツと煮込んだ特濃サウンドに、大西ユカリの人懐っこくもパンチの効いた歌声がコッテリと絡み合う。そんなコク深くも親しみやすいサウンドを、2000年の結成以来生み出し続ける大西ユカリと新世界が、ニュー・アルバム『七曲入』をリリース。

「今回のアルバムでは、バンドのベーシックな部分でもあるソウル・ミュージックにもう一度立ち帰ろうと思ったんです。ただ、黒人音楽は全般的に好きなんですけど、ウチら演奏自体がイナタいもので、普通にやってるとどうしても南部寄りというかミシシッピ・デルタな感じになってしまうんです(笑)」。

 図らずもスタックス・サウンド直系のイナタくもタイトなグルーヴがグッと前面に押し出されることと相成った今作。そこに乗せて届けられる歌声は、浪花のアレサ・フランクリン、というよりも浪花のメイヴィス・ステイプルズといったところでしょ~か(桂三枝調)。その味わいたるやディープで滋味深いこと、この上なし!

「それは自分のめざしてきたところでしたからねえ。〈あ~、私もこんな声で歌いたいわぁ〉と思いながら、10代のころからずっと歌い続けてきて。ここにきてやっと自分の声がちゃんとコントロールできるようになってきたのかもしれませんね」。

 ムンムンと匂い立つような持ち前の昭和歌謡テイストも健在。なかでも阿木耀子&宇崎竜童による書き下ろしナンバー“真夜中に聴いた歌”は、とにかく必聴とのこと。

「宇崎さんいわく、大阪の元気なお姐ちゃんにこういう曲を歌わせたらどうなるか、っていうのがテーマだったみたいで。また、阿木さんの歌詞もようできてますねん。〈不倫〉とか〈演歌〉とか、そういうフレーズを使いながらも、ポップ・ミュージックの歌詞として、しっかりと着地していて」。

 それ以外にも、ギターの三好ひろあきが加入後初めて作曲を手掛けたセツナ混じりの歌謡佳曲“失恋ドライブイン”や、黒人音楽に身も心も捧げた青春時代を振り返るかのような“めり込む青春”など、聴き応え十分の楽曲をタイトルどおり全7曲収録した今作……ではあるけれど、満足するのはまだ早い。今作には、なんと都合8曲にもおよぶボーナス・トラック(!)がガッツリ収録されているのだ。その理由も、実に彼女らしいと言うかなんと言うか、大阪人特有のサーヴィス精神が過剰なまでに大バクハツ!

「例えば、ボンカレーが2個パック150円で売ってたとして、〈もう1個買うたら、180円でっせ!〉言われたら迷わず買いますやろ? ホンマ、そんな発想なんです」。 

 庶民感覚溢れる、地に足付いたナイスなアイデア! これぞまさしく〈ダウン・トゥー・アース〉ってなもんでしょう!?

▼大西ユカリと新世界の近作を紹介。

▼大西ユカリと新世界『七曲入』のなかに煮込まれたルーツ・ミュージックを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年04月08日 16:00

更新: 2004年04月08日 17:52

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/望月 哲