インタビュー

残像カフェ

花々が咲き乱れる春――季節の移ろいをじっくりと見つめた残像カフェの新作がついに開花!


 冷たい空気と暖かさが交互に押し寄せるこの時期には、心の柔らかい部分をつつかれるような、なんとも切ない気持ちになる。そんなメランコリックな感情を、残像カフェのニュー・アルバム『4月のことば』は素敵に後押ししてくれる。

「やっぱり季節が変わっていくときというのは、いろんなことを感じたり思い出したりする。それに身の回りのことが連動して歌になることが多いんです。特に去年一年間というのはそういう意識が強かった。曲を書いていくうちに季節がどんどん変わっていくじゃないですか。春といっても、3月と5月では違うんですよ。それなら、この一年間の気分を、その季節になると決まって思い出すこととして曲にしてみようって」(大森元気、ヴォーカル/ギター)。

 昨年発表された傑作シングル“3月のシーン”以降、新たなモードでじっくりと取り組んだという今作は、どっしりと腰の据わったグルーヴ感が印象深い。かねてから評価の高かった彼らの叙情性に加え、ずっと作りたかったという“白い夏”のようなアップテンポの曲や、夢幻的な“星祭り”の新たなヴァージョンなど、軽やかなウィットも含めて彼らの音楽的語彙の豊富さと躍動が煌めいている。バンドとしてのうねりがサウンドに定着しているのだ。

「今回特にリズムの面を自然にできたというのがあって、曲によってドラムの種類を変えたり、メロディーと歌詞以外の部分でもカラーを変えることができたから、曲に対してこういうリズムだろうっていう感覚が、バンドとしてズレがなくなってきた」(澤田修一、ドラムス)。

「それぞれ好きな音楽のジャンルや好みがあって、この3人が合わさった時にできる共通項みたいなものが、ここにきてより明確になってきたのかなって」(大友寛之、ベース)。

 ウェットさを湛えた大森のヴォーカルには、力強さが加わり、さらに説得力を増した。60年代の音が持つ雰囲気を自分たちなりに再現しようとしていた時期だったという前作『今宵 & みゅーじっく』を経て、ライヴバンドとしても評価の高い彼らの表現力は深い切実さをもって迫ってくる。

「デビュー以来、自分たちのやりたいことやれることを確認したり、開拓したり、挑戦することで、いまいちばん自分たちらしいものを作れる気分になってきましたね」(大森)。

 今年のサクラはいつにも増して早咲きするらしいし、残像カフェのアルバムを連れて、街へ繰り出そう。

▼残像カフェの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年04月08日 16:00

更新: 2004年04月09日 19:36

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/駒井 憲嗣