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インタビュー

ザ・マッド・カプセル・マーケッツ

2年8か月ぶりとなるオリジナル・アルバム『CiSTm K0nFLiqT...』完成。海外での活動も大きな糧となり、MADサウンドがこれまで以上に力強く放たれる!


 2001年のアルバム『010』を発表する前後から、海外でも高い評価を受けていたTHE MAD CAPSULE MARKETS。海外盤のリリースを経て、アメリカ、ヨーロッパ・ツアー、数々のフェス出演と、国内での活躍もさることながら、その戦場を世界的なものとしてきた。その、『010』からの2年8か月は、彼らにとって非常に得ることの多かった期間だった。そこで培ったものを糧に、ついに彼らはニュー・アルバムを完成。『CiSTm K0nFLiqT...』(システム・コンフリクト)は、さらにスケールアップしたTHE MAD CAPSULE MARKETSの世界を覗かせてくれる作品となった。

「毎回なんですけど、これ以上ないくらいの最高のもの作ろうって始めたんです。いま考えてることを、歌詞でももっとわかりやすく伝えるようにと意識しました。音の面でも、〈くる〉感じ、突き刺さる感じを意識して。開放感っていうんですかね、そういうところに重きを置くのを理想にしてたんです。そこに限りなく近付いて満足してます。いままでで最高のアルバムかなって、自分でいうのもなんですけど(笑)。それだけ満足してるんです」(KYONO、ヴォーカル:以下同)。

 彼が言うように、歌詞もサウンドも、これまでにも増してダイレクトに伝わってくる作品に仕上がった。彼らの持ち味である、〈生バンドとデジタル・サウンド〉の融合ぶりはますます強靱なものとなり、疾走感とハードさはより鋭く研ぎすまされた。さらには先行シングル“SCARY”でも聴かれたキャッチーな面、メロディーラインの良さがこれまで以上にサウンドと絶妙なマッチングを聴かせてくれる。そして力強さを増したKYONOのヴォーカルから発せられる歌詞の内容は、シンプルな言葉で、社会的なことから現在の彼らが感じることまでストレートに伝えている。本作のテーマも、2年と8か月の間に、彼らが身をもって経験した出来事が強く反映されたようだ。

「核になってるテーマは、やっぱり〈平和〉です。海外での経験一個一個が大きいですね。日本だけでやってたときとは明らかに考え方が違うと思います。海外でやったのは凄く大きかったと思います。やってるときはガムシャラだったんですけど、振り返るとね、支えにも力にもなります。個人的には、イラク戦争が始まったときマンチェスターにいて、学生たちのデモ行進を目の当たりにしたり。衝撃的ですよね、実際現場で見るのは。感じ方も違う気がします。あとは海外でライヴをやって、言葉が通じないのに共感してくれたっていうのがいちばん大きいですね。やっぱり音楽って凄いなっていうのを再確認しましたね」。

 さて、パワーアップしたサウンドは、ほとんどを自分たちのスタジオで気の済むまで作り込んだもの。「やり残した部分は完全にないですね」と言うように、アルバムはまさにパーフェクトな作品となった。では、コンピュータ用語だというアルバム・タイトル『CiSTm K0nFLiqT...』に込められた意味は?

「コンピュータのシステム同士が、矛盾から衝突して、最終的には動かなくなっちゃうことを指す用語です。言葉のイメージもそうだし、意味もアルバムのトータル・イメージもピッタリかなって。いまの世の中、社会全体もそうだし、地球全体がコンフリクト(矛盾、衝突)してるイメージも感じてたんで。そういう大きい見方もできるなって」。

 ギリギリのラインで生きている人間の声を、デジタルなサウンドとのミックスで聴かせる『CiSTm K0nFLiqT...』。では、みずから最高傑作といってはばからない新作全体の感想を訊いてみた。

「いままで以上に強いアルバムだなって。音のハードさもあるけど、人間らしさが出てるなって。感情、怒り、楽しさ、安らぎとかいろんな感情が入ってると思うんです。それが見えるから強さ、パワーを感じる作品になったなと思うんです。あと今回、ジャケットとは別に歌詞だけのブックレットを付けたんで、ちゃんと日本語訳を読みながら聴いてほしいですね。いままでわかる人さえわかればいいっていうのがどこかあったけど、これもいままで以上に伝えたいって気持ちの表れですね。 わかりやすくすることで、より自分たちの音を理解してもらえるのかなって。自分が昔聴いて衝撃を受けた作品って、やっぱり音に〈力〉を持ってたと思うんです。それがこのアルバムにはあるかな」。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年04月15日 14:00

更新: 2004年05月07日 17:59

ソース: 『bounce』 252号(2004/3/25)

文/土屋 恵介