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インタビュー

椿屋四重奏


 いわゆる〈ギター・ロック〉として一括されるであろうバンドのひとつではあるのですが、椿屋四重奏が鳴らす音を聴いて得られるカタルシスは、数多のギター・ロック・バンドとは明らかに違った感覚のものであります。それは具体的に説明……するよりも、このバンドのデフォルトを築いているヴォーカル/ギターの中田裕二(22歳)が過ごしてきたミュージック・ライフ、それをまず訊いてみるのが近道ではないかと。

「聴いてきたものの多くがバンド・サウンドじゃなかったりしますからね。でも、そういったものが身体に染みついちゃってるから。小さいころは、親が聴いてたこともあって安全地帯とか中森明菜とか来生たかおとか、当時の歌謡曲をめちゃくちゃ耳にしてました。最初に買ったCDはチャゲ&飛鳥なんですけど、いまだに好きです。チャゲアスを聴いて、歌うことが好きになったから。それからTHE YELLOW MONKEYに憧れて、グラム・ロックとか聴いたり。オレにとってイエモンは、歌謡曲とロックの架け橋を築いてくれたバンドかもしれないですね。でも、洋楽のロックとか、いまだに詳しくない(笑)。根っこに〈ポップスをやりたい〉っていうのがすごくあるし、歌謡曲にずっと受け継がれているメロディーの逞しさや〈湿気〉は、基本として持っていたいなっていうのがありますからね。それって洋楽では満たされなかったりしますから。湿気がないと日本人は生きられないですからね(ニコッ)」(中田裕二:以下同)。

 ……と、なんとなく〈違い〉の原因がわかったでしょうか? そんな彼らは、昨年の夏にファースト・ミニ・アルバム『椿屋四重奏』をリリースしたわけですが、これがなかなか良いリアクションを得たようで。
「自分ではこういう音を聴いたことないから作ったし、自信はあったんですけど、受け入れられるのかな?って心配もあったんです。でも、意外に大丈夫だった。ヴィジュアル系を聴いてる人から反応があったりして……〈耽美性〉みたいなところは楽曲の武器として持っていたいというのがあるから、すごくうれしかった」。

 そしてこのたびファースト・フル・アルバム『深紅なる肖像』が届けられたわけですが、どの曲にも明確な〈聴かせどころ〉がある、言うなれば彼が聴いて育った歌謡曲のような普遍性をおおいに孕んだ楽曲群が並んでおります。

「やっぱりサビありき、ですよね。聴いてきたものが聴いてきたものだけに、結構、美メロみたいなものを得意としてるかも知れないです。でも、一曲としてまとめるのは時間がかかるほうだし、最近は〈来た来た来た~!〉っていう、ホントにわかりやすい展開ほど作るのが難しいっていうのがわかってきましたね」。

 数多のギター・ロック・バンドとは明らかに違った感覚……と、冒頭に述べましたが、ゆえに椿屋四重奏がめざす場所、そして結果的に躍り出る場所も、明らかに違うような気がしてなりません。

「バンドの世界に入り込んじゃってワイワイ楽しむ感じっていうか、いわゆるオレが思う本来のロック・バンドらしい楽しみ方みたいなものが、最近あんまりないなとか思って……そういうところに行きたいですね。ファンを独り占めしたいんですよ。グレイ・ゾーンなんていらないですね。好きか嫌いかはっきりしてくれ、って。その、一方的な感じ、受け入れざるを得ない感じっていうのがね、ロックの素晴らしいところだと思うんですよ。しかも、ごく一般の人に届けたいですね。一般の人がぼんやりと思ってるロックをやりたい。ロック好きも押さえておきたいといえば押さえておきたいんですけど、でも、優先順位としては一般の、普段はロックとかそんなに聴かない、CDなんかあまり買わない人とか、そこに伝わったら勝ちだと思います。イエモンはそこに行けたバンドだと思うんですよ。オレたちもオレたちなりの形を作れたら、って思います……まあ、作りますけど」。

PROFILE

椿屋四重奏
2000年結成。幾度かのメンバー・チェンジを経たのち、2002年に現在のラインナップとなる。メンバーは、中田裕二(ヴォーカル/ギター)、永田貴樹(ベース)、小寺良太(ドラムス)。精力的なライヴ活動を展開していくなかで、会場をメインに販売した自主制作盤が2,000枚以上のセールスを上げるなど、徐々に話題を集めていき、2003年8月にはファースト・ミニ・アルバム『椿屋四重奏』をリリース。アグレッシヴなギター・サウンドと、キャッチーで艶やかなメロディーを軸に展開されるサウンドに、より多くのリスナーからの熱い視線を集める。このたび、待望のファースト・フル・アルバム『深紅なる肖像』(DAIZAWA/UKプロジェクト)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年04月28日 12:00

更新: 2004年04月28日 20:02

ソース: 『bounce』 253号(2004/4/25)

文/久保田 泰平