COMEBACK MY DAUGHTERS
グッとくるメロディーがこれでもか!ってくらいに込められた楽曲の数々。COMEBACK MY DAUGHTERSの持ち味はまさにそれだ。ファースト・アルバム『Spitting Kisses』には、マージー・ビート、パワー・ポップ、ギター・ポップ、そしてエモ……といった〈グッとくるメロディー〉のキーワードが詰まりまくっている。
「ゲット・アップ・キッズやプロミス・リングとか、きれいなメロディーを乗せるエモ・ロックが出てきた90年代の後半ごろに、自分たちもそういうバンドをやりたいなと思って。まわりにそういうバンドはいなかったけど、自分たちはそこを追求し続けて現在に至った感じですね。今回のアルバムは、ルーツを踏まえたうえで、初期衝動の音楽を前面に出しました」(高本和英)。
形態ばかりのパンク・バンドが無数に存在する現在、そこから脱し、自分たちのサウンドを追求する彼らのようなバンドのほうが、本来の意味での〈パンク〉というものに則っているような気がしてならない。ある意味、PIZZA OF DEATHから彼らの作品がリリースされるのも、そんなところに通じているのではないだろうか。でも、この際そういった姿勢的な部分は後回しにしてもいいくらい、彼らのサウンドのきらめきは素晴らしい。
「僕が歌とメロディーラインを作るんですけど、それをギタリストに委ねてアルペジオが入って……って感じで自分の思ってた音から〈バンドの音〉に変わっていくんです。もともと3人でやってたんですけど、そのころよりも音の仕上がりをメンバーに委ねる部分が大きくなってますね」(高本)。
「曲に対する理想が全員違うから、おもしろい方向に行くんです。それでちゃんと曲が出来上がるから、奇跡ですね(笑)。音の団結感は凄いですよ。これからもまだまだいけそう」(臼倉雅也)。
アルバムを制作するうえでいちばんこだわったというのが、コーラスワークとキーボード。とくに〈音色〉には気を遣ったという。そういった細かい気遣いがあるからこそ、海外のバンドにも通じるようなサウンドが生まれるのだ。もちろん、歌詞とサウンド面の絡み、という部分にも、彼らのこだわりが表れている。
「この世でいちばんかっこいいのはパンク・ロックだと思ってるんで、歌詞の全体的なテーマとしては、些細な不満がテーマになってます。批判的な歌詞だけどポップなメロディーだったり、すごく暗い曲だけど歌詞は正反対とか、そういうところには気をつけてます」(高本)。
メロディーの甘さと歌詞の鋭さが増すことで、サウンドにより深みが出てくる。アルバム・タイトル『Spitting Kisses』は、まさにバンドのアティテュードの表れだ。
「その一言に尽きます」(稗田淳)。
「世間に対してツバを吐くようにキスをするというか……このタイトルには満足してますね」(高本)。
キャッチーでポップでエモな部分だけでなく、サイケデリックな浮遊感もあったりと、そのサウンドからは彼らの懐の深さが窺える。そんな彼らの第一歩というべきアルバム『Spitting Kisses』の聴きどころを、メンバー自身から語ってもらおう。
「歌メロとサウンドの混ざり具合を聴いてください」(小坂裕亮)。
「楽曲はもちろん、ジャケットも含めてひとつの作品だと思ってるので、トータルで楽しんでください」(中津川吾郎)。
「良いアルバムなので、素直に聴いてください」(臼倉)。
「PIZZA OF DEATHのCDなんか買わねえよ!って人も、聴いてもらえれば(笑)。1枚ぐらいこのレーベルのCDがあってもいいんじゃないかって」(稗田)。
「PIZZA OF DEATHを僕らのカラーで染めようと(笑)。とにかく僕らはメロディーを大切にしてるんで、歌詞も含めて、いろんなふうに感じてほしいですね」(高本)。
PROFILE
COMEBACK MY DAUGHTERS
98年、高本和英(ヴォーカル/ギター)、稗田淳(ベース)、中津川吾郎(ドラムス)の3人で結成。同年9月にライヴ活動を開始し、自主制作の音源もコンスタントに発表しながら注目を集めていく。2000年に臼倉雅也(ギター)、小坂裕亮(キーボード)を加えた現在のラインナップとなり、さらに精力的なライヴ活動を展開。これまでにヘイ・メルセデス、キュー&ノット・ユーなど海外バンドとの共演も果たし、洋楽リスナーのあいだでも評判となる。2003年には、ウィーザーのトリビュート・アルバム『across the sea~a tribute to weezer~』に参加。バンドへの期待も徐々に高まっていくなか、ファースト・アルバム『Spitting Kisses』(PIZZA OF DEATH)がリリースされたばかり。