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インタビュー

DJ MARKY & XRS

相棒XRSと共に初のアルバムを完成させたブラジリアン・ドラムンベースの第一人者=DJマーキーを直撃!! 彼が語るブラジル音楽への愛、そして未来……


 この5月に3度目の来日を果たしたブラジリアンDJ、マーキー。相棒XRSとのプロダクションによる初アルバム『In Rotation』を引っ提げての参上だ。そのためか、クラブ・ギグではいつにも増してプレイが熱い熱い。得意のスクラッチも切れ味冴え渡り、クラウドの体温を一気に上昇させていた。

「日本のクラウドは反応がダイレクトだから凄くハッピーになれるよ」。

 いっぽう、前回に続きいっしょだったのはスタミナMC(写真左)だ。彼をフィーチャーしたヒット曲“LK”がフロアに流れたときは、予想どおりの大盛り上がりだったが、このトラックには意外な制作秘話があるのだとか。アルバムでも重要な位置を占めるだけに、ちょっと探りを入れてみることに。

「こういうことがあったんだ。まだリリックが付いてなかったとき、スタミナMCが鼻歌まじりに勝手にリリックを被せて唄ってたんだよ。その後、同じクラブでDJをしたんだけど、このときスタミナはいなかった。それなのに、“LK”をかけたらフロアの客が唄いはじめたんだよ。そりゃ驚いたさ。みんな彼のリリックを覚えててくれたんだ」。

“LK”は、もともとジョルジ・ベン&トッキーニョの古典“Carolina Carol Bela”をサンプリングしたEPだった。しかし、ここでマーキーが話すように、スタミナによるオリジナル歌詞の好リアクションを受け、正規版ではヴォーカル・ヴァージョンに差し替えられたというわけだ。

 最近のブラジリアン・ドラムンベース事情は、サンプリング・ソースに自国の遺産を巧みに使い回しているのが特徴だ。これまで意識してこなかったのがフシギなくらいだが、どんなことをやれば世界が受け入れてくれるのか、それほど意識してこなかったというのが彼らの本音だろう。ブラジルのドラムンベース人口は、まだまだ多くないということもある。しかし、マーキーのように活動の場を世界に移したことで、自分たちが何をすればいいのか、気付きはじめてきたというわけだ。あのジルベルト・ジルをフィーチャーした“Dia De Sol”など、まさにそんな曲。“LK”に続くキラー・チューンとしていまから期待されている。

「いっしょにレコーディングできるなんて夢のようだったね。とにかく、ジルのすべてが好きなんだ。もう子どものころから聴いてるから、彼の歌を口ずさめばオレの青春時代も甦ってくる。ジルにしか作り出せないメロディー、ファルセットを使った声など、どれも独特だよね」。

 超絶技巧のDJプレイからはちょっと想像できない、メロウでミュージカル志向の高いドラムンベース作品。フロアでロックすることに目的が集中している昨今のシーンには見られない、豊かなヴァリエーションを噛みしめられる楽曲の数々だ。

「DJと制作の違いをそれほど意識したりしてるわけじゃないけど、アルバムはずっと残るものだから、自分の好みやバックボーンなんかが自然と反映されてくるんだ」。

 今回のジルのように、ジョルジ・ベンやジョイスなど、ブラジル音楽界のVIPとのコラボレーションも熱望していたマーキー。今後はどのようなヴィジョンを見せてくれるのだろうか。期待を膨らませてていい?

「まだ何とも言えない。でも、つまらない報告はしたくないから、これからも応援してくれよ」。

 リリース・ツアー前半を景気良く飾った東京ギグを終え、次なる目的地オーストラリアへ足早に向かったマーキー。超多忙なDJが作った『In Rotation』は、それとは対照的に夢心地の空間をリスナーに与えてくれる、まさにパラダイスなアルバムだ。今年の夏本番に向け、やっぱ必携でしょう。

▼『In Rotation』に参加したアーティストの近作

▼DJマーキーのミックスCD

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年06月01日 11:00

更新: 2004年07月01日 19:00

ソース: 『bounce』 255号(2004/6/25)

文/若杉 実