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インタビュー

Velvet Revolver


「こう言う人もいるだろう。〈ああ、スーパーグループか〉って。俺たちはそんなことをめざしてこのバンドを組んだわけじゃない。ただロックの世界に混沌を取り戻したいのさ」(ダフ・マッケイガン)。

「2人とも昔よりもいいプレイヤーになっているし、オリジナリティーもさらに確立されている。あのバンドが分裂してからいろんなことを経験してきたけど、いまじゃ頭のなかもクリアになってるし、目的もはっきりしてるんだ」(スラッシュ)。

 20世紀ロック史の最終ページにその名を刻み込まれた偉大なるモンスター・バンド、ガンズ&ローゼズ(以下、GNR)。オリジナル・メンバーが離散してしまう90年代中期までこのバンドの一員として共に活動していたダフとスラッシュが、10年間の月日を経てここに再会を果たした。それがこのヴェルヴェット・リヴォルヴァーだ。彼らのニュー・バンドに加わったのはGNR時代の盟友であるマット・ソーラム(ドラムス)、デイヴ・ナヴァロのバンドでも活動していたデイヴ・クシュナー(ギター)。ヴォーカリストに選ばれたのはストーン・テンプル・パイロッツのフロントマン、スコット・ウェイランドだ。

「ロックンロールは金じゃないし、女でもない。重要なのは、とにかくいい曲を作って、バンドを持続させること――そういった部分を俺らは共有してるんだ。だから、俺らは出会うべくして出会った感じなんだ」(ダフ)。

 ジョシュ・エイブラハムをプロデューサーに迎えて制作された彼らのファースト・アルバム『Contraband』は、アナログ・テープにレコーディングするなど彼ららしいこだわりも試みられている。それにしても、この音の生々しさは強烈だ。すべての音がスピーカーを突き破らんばかりの勢いで爆発し、蠢いている。

「だろ(笑)? 俺らは昔からマテリアルを十分に練習してからレコーディングに臨むんだ。で、曲をきちんと覚えてから、ジャム・セッション的な要素も大事にしながら3テイクぐらいで録る。つまりはいちばんいい瞬間を録音するんだ。だからすごくスポンティニアスなところもあるし、ライヴ的な部分もあるんだ」(スラッシュ)。

 このバンドはスーパーグループでありながら、その一方ではまるで駆け出しの新人バンドのようでもある。出来上がったばかりのファースト・アルバムについて楽し気に語るスラッシュとダフの姿にもかつてのデンジャラスなロックンロール・ライフの面影は見受けられない。だが、一方ではかつての彼らの姿を知るものにとって、それは信じられない光景でもある。90年代中盤からマーシャル・アーツのトレーニングを積んできたというダフの表情も健康そのものだ。

「俺たちはいっしょにプレイする方法を学んだばかりの子供たちのようだった。いつもワクワクしていて〈わぁ、俺たち曲を書いちまったよ!〉とか〈ライヴをやっちゃったよ!〉って感じなんだ」(スラッシュ)。

 だが、しかし、あなたたちは紛れもないロックスターだ。

「ロックスターになるために努力した覚えはないんだけどな(笑)。俺たちが音楽に対して大切にしているのは、ほかの4人といっしょにプレイするときに得られる刺激だったり鳥肌が立つような興奮なんだ」(スラッシュ)。

 使い古された言葉である〈初期衝動〉をふたたび取り戻した彼ら。それが栄光とゴシップにまみれたかつてのバンドと訣別するためのものだったとしても、その歩みの重要さに変わりはない。

「ステージを観ればみんなわかってくれると思うんだ。俺らはこれまでにある程度レコードを売ってきたからこのアルバムの売り上げにはそんなに興味がなくて、そんなことよりもツアーをやってショウを続けていきたい。そういう活動を続けていくなかで音楽ビジネスのあり方も変わってきてほしいと思ってるんだ」(スラッシュ)。

 これは新たなる伝説の始まりなんかじゃない。ただ、最高にイカしたロックンロール・バンドがまたひとつ産声を上げたということなのだ。

PROFILE

ヴェルヴェット・リヴォルヴァー
元ガンズ&ローゼズのスラッシュ(ギター)、ダフ・マッケイガン(ベース)、マット・ソーラム(ドラムス)の3人が、2002年に行われたランディ・カスティロのベネフィット・コンサートで共にプレイしたことがバンド結成の大きなきっかけとなる。その後、デイヴ・クシュナー(ギター)と、ストーン・テンプル・パイロッツのスコット・ウェイランド(ヴォーカル)が加わり、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーが結成された。映画「ハルク」のサントラへの楽曲提供や、自家用ジェット機によるプロモーション・ツアーなど、アルバムの発表を前にして大きな話題を集める。6月2日にはデビュー・アルバム『Contraband』(RCA/BMGファンハウス)が日本先行リリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年06月03日 17:00

更新: 2004年06月03日 18:11

ソース: 『bounce』 254号(2004/5/25)

文/大石 始