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インタビュー

PAPA B

喜怒哀楽をマイクひとつで表現し、ジャパニーズ・レゲエ・シーンにおいてトビ抜けた個性を放つリアル・エンターテイナー、PAPA Bに注目せよ!!


 バリッとスーツを着こなし、猛烈な早口スタイルでユーモラスなリリックを連射してみたかと思えば、〈ソウルフル〉とすら表現したくなるような溢れんばかりの歌心を発揮してみたり……PAPA Bは、あらゆるアーティストがしのぎを削る現在のジャパニーズ・レゲエ・シーンにおいて、そんな個性的なスタイルでシーンの中心的な役割を担ってきた。80年代後半からPAPA BONという名でマイクを握りはじめ(2001年にPAPA Bに改名)、現在活躍する多くのアーティスト/サウンドマンからの絶大な信頼と敬意を集めてきた彼だが、これまでにリリースしたフル・アルバムは98年の『Sword Man』(現在廃盤)のみ。実に6年ぶりとなるニュー・アルバム『NEO ENTERTAINER』は〈PAPA B!〉と連呼されるイントロで幕を開けるが、はっきり言ってこっちだって叫びたい気分だ。待ちくたびれたぞ、PAPA B!!!

「でもね、その6年間のなかではダメな時期もあったし、いま考えると何を焦ってたのかな、という時期もあった。でも、自分の趣味で作るのがいちばんなのかな、と一度吹っ切れたんですね。で、前から彼らとは〈なにかいっしょにやろう〉と話をしてたんです。ガッチリわかりあえる仲間ができればそのときこそが〈Good To Go〉みたいな感じだったから。自分のなかでもタイミングがよかったのかな」。

〈彼ら〉とは、紛れもなく現在のジャパニーズ・レゲエ・シーンの牽引者であるMIGHTY CROWN。MIGHTY主宰のLIFE STYLEに所属するDJでありながら、トラックメイクの面でも彼らを支えるGUAN CHAIらもその輪に加わったMIGHTYファミリーと共に今作の制作は行われた。ありきたりな表現をすれば、つまりは最強タッグなのである。

「すごくおもしろかった。曲順もみんなで考えて、サウンドマンの立場としてはこう並べたらいいと思うな、とか。友達や仲間と音楽を作らないと僕なんかダメなんです。前のアルバムは全部ジャマイカで作ったんですけど、いまあのアルバムを聴くと当時の思い出が蘇ってくる。そういう音楽の作り方が僕にとっての醍醐味なんですよ」。 

 そう謙遜気味にPAPA Bは話すが、昨年から各地のダンスを賑わせてきた“お経でポン!”や、阿波踊りとダンスホールを配合した“OUR DANCE”では、PAPA Bというアーティストの個性と磨き抜かれたスキルが完璧な形で結実している。こんな曲は彼しか作れないだろう。

「“お経でポン!”は〈大人 大人ぶるから馬鹿モン!〉っていうフレーズが最初に出てきた。“OUR DANCE”は一連のジャマイカのダンスもののパロディーみたいな感じで作りました。この曲とその次の“ソーランダンス”は、どこで音頭とダンスホールの接点を作るか、どうやったらお客さんに楽しく踊ってもらえるだろう?って考えながら作りましたね」。

 カリプソの匂いも漂ってくる“MONEY CAN'T BUY”、PAPA Bいわく「どうしてもこれがやりたかった」というハードロック・ナンバー“ONE MORE CHANCE”、YOYO-Cとの高速ジョグリン・チューン“麗しの美女”、FIRE BALLをコーラスに迎えた“MEDITATION”……スキットも含めれば全14通りのトピックが『NEO ENTERTAINER』には存在する。そんなアイデアの源を探っていくと、幼少時から積み重ねてきた彼の膨大な音楽知識の貯蔵庫に辿り着いた。

「東ヨーロッパの音楽がとくに好きですね。ブルガリアン・ヴォイスがおもしろいなと思ったら、ブルガリアの隣のハンガリーはどんな感じなのかな、とかどんどん掘っていくうちに中東や北アフリカも探っていって、そのうちライ(アルジェリアなどマグレブ系移民のブルース。強烈なコブシを特徴としている)にも出会った」。

 自身も「大学時代の楽しみだった通販も再開したんですよ。もうかなりのオタク(笑)」と言うが、一方では「〈コロコロ変わるね〉って言われるのがおっかないんで、〈レゲエ〉という部分はすごく大事にしてるんです」と話す。要は彼、生粋の音楽オタクでありながら生粋のレゲエ・エンターテイナーなのである。そういった意味で『NEO ENTERTAINER』は、レゲエが持つ自由さやしなやかさをPAPA B流にエンターテインした作品であるといえるだろう。そして同時に今作は、コアなレゲエ・ファンを満足させるだけでなく、あらゆるリスナーをレゲエの世界へと誘う磁力も持っているのだ。

「〈おもしろい音楽ってないかな?〉って探している人が、新しい音楽ネタに困ったときにこのアルバムを聴いてイイって思ってくれたら最高っスね。もう、しめたもん」。

 こんな作品が、そしてこんなアーティストがシーンを前進させる。

▼PAPA Bの作品および参加作品。

▼PAPA Bが敬愛するアーティストの代表作。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年06月10日 14:00

更新: 2004年07月01日 19:09

ソース: 『bounce』 254号(2004/5/25)

文/大石 始