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インタビュー

ネタンダーズ

キレ味鋭いキラーなギタープレイでその名を轟かせる塚本功。彼がフロントマンを務めるネタンダーズの激ファンキー&ソウルフルな2枚組大傑作が完成!!


 ウキウキするようなルーズなビートに歌やギターやサックスがゴシゴシ擦れ合って、あのネタンダーズ音楽が生まれる。彼らの魅力を口にしようとムニャムニャやってると、洗い立てのヴィンテージ・シャツに袖を通す感覚に似てる、なんて言葉がポトリと落ちた。久々のスタジオ・レコーディング・アルバムをリリースする彼ら、この
『THE NETANDERS』は独特で心地良い肌触りをたっぷり堪能させてくれる内容で、快適音楽愛好者を心底喜ばせる嬉しい2枚組作品となった。

「勢いよく録ったらこんだけ溜まって。最初はミニ・アルバムとフル・アルバムに分ける予定もあったけど、コンセプトが緩くなるってことで全部放り込んで凝縮させた」(塚本功、ギター/ヴォーカル:以下同)。

 アルバムの音の感触は、全体を包むふわっとしててどこかのどかなエコー感が特徴的だ。そこで絶妙なアンサンブルが展開し、真ん中に色とりどりの美メロがキラキラと照らし出される素敵な光景が浮かぶ。

「録音は小さい部屋で全員が〈いっせえのぉでっ!〉というやり方。各マイクに各音が干渉しあう感じを求めた。でも、別に自然な空気感を出すってことをめざしたわけじゃなく、厚みが欲しかったんですよね。どこのバンドもこういうジレンマがあるんだろうけど、練習テイクのほうがいいってことが多くて。それを再現ってできないし、またやってもしょうがない。でも、今回はなるべくそれに近付けられるようにっていうテーマがあって、それはやや成功したんじゃないかな」。 

 さて、塚本はここ数年、小島麻由美のバックに参加したり、ソロ・アルバム『ELE-CTRIC SPANISH 175』を発表したり、最近ではSLY MONGOOSEのメンバーになったりと多岐に渡る活動を続け、多忙な男となった。そんな彼がいざネタンダーズに向き合う時の気持ちとはいかなるものなのか?

「ドラムでリーダーの高野(純一)からアルバム作ろうって話があって、僕が、いいねぇって乗っかって出来上がったアルバムなんです。それがすごく良くて、とても気楽に乗っかれたというか。一所懸命に歌とギターをやるって気持ちに集中できた」。

 このアルバムでの彼はバンドへの求心力を高めて、実直にネタンダーズ人間であろうとする姿を見せている。当然、外部で吸収したいろんなもの、例えば身につけたさまざまなテクニックをバンドで披露する機会は増えただろう。が、それよりまず大事なことをじっと見つめようとしたみたいだ。もともとネタンダーズといえばブルースやスタックス系ソウルを下地にしたスタイルについてスポットが当てられることが多く、趣味性の強いバンドってイメージは少なからずあったと思う。しかし、このアルバムを聴くとちょっと違う領域に彼らは進んだという印象を抱き、一層自由になったような気がする。

「なんでしょう……ひとつ諦めもあるというか。かつてはバンドはこうじゃなきゃいけないってこだわりもあったし、周りにライヴァルもいて、そのあたりから考えると一回終わったような感じはある。リーダーとバンドを続けようって話になって、僕は他の活動もやりつつってスタンスだし、力が抜けて。(バンドを)やれてラッキーみたいなところがある。あと、外の活動やって、好きなことやっていいんだってふうに考えられるようになったことがすごく大きい」。

 なんだろうか、この不思議な軽さは?――『THE NETANDERS』を聴いてそう感じる時が何度もあった。バンドを継続させることは深みへ進むことに違いないのだろうが、彼らは重くなることを回避しつつスイスイと前進していく。            

「専門的にひとつのスタイルを追求していくバンドもあるけど僕らは違う。逆に今はマニアックなものに楽に入っていけるようになってる。軽く飛び越えることは意識しますね。それが聴きやすさに繋がればいい。一発録りした時のその音に刻まれる念みたいなものを掴まえたいんですよ」。

 どんな時でも薄着でみんなの前に立つ、そんな潔さが今のネタンダーズの強みだ。虫取りアミを手に、理想の音を追い掛け、ネタンダーズは今日も野原を駆け巡る。

▼ネタンダーズの関連盤を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年06月10日 18:00

更新: 2004年07月01日 19:09

ソース: 『bounce』 254号(2004/5/25)

文/桑原 シロー