インタビュー

Sleepy.ab

流麗なメロディーセンスで映像的音世界を繰り広げる4人組が〈核〉とするものとは……!?


 はじまりは、シューゲイザーですらなかった。不眠症を癒すため、「夜眠るための音楽」を自分で作りはじめたのがきっかけだという、きわめてパーソナルな音楽表現。というか、ひとりごと。形はバンドになり、ライヴも増え、映像畑とのコラボレートも積極的にこなすようになった昨今だが、いまでも曲作りの動機の根っこは同じだと、ヴォーカル/ギターの成山剛は言う。

「とにかく自分が気持ちいいもの、っていうのはずっと変わらないです。詞も、いろんな想像ができるものにしたいから、名詞はほとんどない。一行一行で映像が変わっていって、行間を読ませる感じですね。めざしてるのは〈日曜日の夕方〉のイメージ。夕陽が沈んで暗くなる前の、透明な時間を切り取って書いてるというか……そのときは楽しいけど、でも終わってしまうし、でも明日もあるし……みたいな。切なくて、たまらない気持ちですね」(成山)。

 Sleepy.abのセカンド・アルバム『traveling fair』は、よりバンド感が強まり、リズムが強調され、弦楽器は時に激しく時に緩やかに、そして美しすぎるメロディーは鋭く際立つ。オリジナリティー溢れるバンドを続々と輩出する北の音楽都市・札幌で誕生したこのバンドにとって、ジャイアント・ステップとなるに違いない秀作である。

「メロディーありき、なんですよ。メロディーを聴かせるためにどんなリズム・パターンがいいか、つねに変わったことを試してます」(津波秀樹、ドラムス)。

「フロントの2人だけだと、ふわふわしちゃう。それをいかに打ち壊すか。今回、破壊的な要素を持ったリズムが多いですね。ポリリズムをやってみたりして、ちょっと知的さもアピールしつつ(笑)」(田中秀幸、ベース)。

 繊細かつドリーミーな音作りゆえ、油断すると狭くなりがちな世界だが、生来ポップな要素が決してそうはさせない。まずは試聴機でお聴きになるのであれば、3曲目“夢の花”は絶対チェックの潜在ヒット曲だ。

「とくに音楽を意識してない人にも伝わっていくと嬉しいですね。たとえば絵を描く人とか。自分も、絵とか映画とかから刺激を受けることが多いので」(山内憲介、ギター)。

 まだ新芽。しかし、大きく育ちそうな予感漂う未来の大器である。

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掲載: 2004年06月24日 16:00

更新: 2004年06月24日 19:19

ソース: 『bounce』 254号(2004/5/25)

文/宮本 英夫