インタビュー

The Streets


 2001年10月、UKガラージ・レーベルのロックト・オンからリリースしたシングル“Has It Come To This?”たった1曲だけで、たちまちポップスターの仲間入りを果たしたストリーツことマイク・スキナー。その後、ファースト・アルバム『Original Pirate Material』がリリースされる頃には、本国UKであらゆるメディアを制圧し、さらに大方の予想を覆してヒップホップの本拠地アメリカでも成功を収めるという異例の事態へ。その勢いはいまだ衰えを知らず、〈イギリス版エミネム〉〈路上の天才少年〉〈ポップカルチャーの未来〉などあらゆる形容が彼を賞賛するために用いられている。そんな最中、待望のセカンド・アルバム『A Grand Don't Come For Free』が届けられた。

「僕は新鮮で楽しめる音楽をいつでも作り続けていなければならない。それが僕のやりたいことで、そのことしか頭にはないんだ」。

 そう話す彼の言葉どおり、自宅のベッドルームでレコーディングし、イギリスの平均的な若者の日常生活を反映したリリックを描いているという点を除けば、この新作には変化が随所に見てとれる。リリックに関していえば、これまでは社会的観点からアプローチしていたようだが、今回は人間関係や日々を生き抜いていくことなど、個人的な視点へとシフトしているとのこと。それが影響したのか、サウンド面でもかなりのチャレンジがあり、ロックやポップス的なアプローチやレイドバックした雰囲気が目立つ。“Dry Your Eyes”ではアコギとストリングスがセンチメンタルなメロディーを織り成し、恐らく誰もがもっとも驚かされるであろう“Fits But You Know It”(彼の新たな代表曲になること間違いなし!)には、自身でプレイしたフェンダー・テレキャスターのグラム・ロックばりに煌びやかで荒々しいリフが挿入されている。これはストリーツとしてデビューする前の彼ならば考えられないアイデアであり、彼がいまだ成長の過程にあることを示すものだ。

「昔は自分が聴いていた音楽と同じようなサウンドを作ろうとしていたんだ。レッドマンやアイス・キューブみたいになろうとしていたのさ。僕はバーミンガム出身の白人の少年ではあったけどね。作った曲をいろんな人に送ってみたけど、特に目新しいことをやっていたわけじゃなかったから、誰も興味を示してくれなかったよ」。

 いまや彼から視線を逸らそうなんて人はどこにもいない。むしろ彼に擦り寄ってくるヤツだらけだろう。しかし、彼がこんなに魅力溢れるアーティストへと成長したのも、なにはともあれUKガラージ抜きには語れない。かつてのオーヴァーグラウンドな勢いこそ失われたものの、マイクにとって狂騒のUKガラージ時代は格別な時間だったようだ。

「とてもエキサイティングな時代だった。UKは盛り上がってたよ。独特のシーンがあって、それまでにないようなサウンドを作り出していたんだ。そして、それは僕や僕の友達も共感できるようなものだった。エキサイティングで新鮮なビートだったし、ラップしている内容も僕たちの生活からそうかけ離れたものではなかったしね」。

 前作リリース後の彼は、新作をリリースするまでの2年間をツアーに明け暮れてきた。今年は2年前の〈SUMMER SONIC〉からさらに規模のデカい〈FUJI ROCK〉へと舞台を移し、きっとその成果を最高の形で見せてくれるだろう。“Has It Come To This?”に続くアンセム“Fits But You Know It”での盛り上がりがいまから目に浮かぶようだ。

PROFILE

ストリーツ
英バーミンガム出身で現在24歳のマイク・スキナーによるソロ・ユニット。7歳の頃からヒップホップに憧れ、10代になるとデモ制作に取り組むようになる。2001年にシングル“Has It Come To This?”でロックト・オンからデビュー、同曲が全英チャート18位にランクインして注目を集める。翌2002年のファースト・アルバム『Original Pirate Material』はメディアの絶賛を浴び、セールス的にも成功を収めている。同年には〈SUMMER SONIC〉出演のために初来日。その後はバンドと共に世界各地をツアーしている。このたび、待望のセカンド・アルバム『A Grand Don't Come For Free』(Wea UK/ワーナー)がリリースされたばかり。7月には〈FUJI ROCK〉出演のために再来日の予定。

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掲載: 2004年07月01日 17:00

更新: 2004年07月01日 19:00

ソース: 『bounce』 255号(2004/6/25)

文/青木 正之