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インタビュー

LOST IN TIME


 大まかに〈ギター・ロック〉と括られるバンドではありながら、メンバー個々の優れた力量あってこそ成し得る表現の豊かさ、楽曲の力強さで群を抜いているLOST IN TIME。軒並み注目されているシーンのなかにはいるけれど、彼らの歩みは確実に一歩一歩、周囲の騒ぎに惑わされることなく、足下を確かめるように進んでいる。そんな彼らが、2年ぶりとなるニュー・アルバム『きのうのこと』を完成させた。

「2年っていう時間は、僕自身も長かったかなって思うんですけど……たとえば、東京から大阪に行く手段っていっぱいあるじゃないですか。大阪に着くっていうのがアルバムを完成させることだとして、飛行機で行く人もいるだろうし、新幹線だったり高速道路だったりで行く人もいる。たぶん僕は下道(したみち)で来たんですよね。だから、目的地に着くまでの景色っていうのもしっかりと見ることができたし、その途中途中でいろんな人と出会うことができていろんな人の世話にもなって。飛行機の良さもあると思うけど、それって着いたとき〈手ブラ〉なんですよ。僕らは着いたときにトランクの中がぎっしりになってたっていうか……そのぶん手間も時間もかかったけど、バンドの体力はついたなあと。いよいよやっていけそうだよ!って……ちょっと漲っちゃってます(笑)」(海北大輔:以下同)。

 彼らが身に付けた力、自信、頼もしさといったようなものは、アルバムの冒頭から容易に窺える。1曲目の“ヒカリ”で歌われる言葉は実に前向きで力強く、そして優しく耳を惹きつけるものだ。

「最後の最後に出来た曲で、すげえイイ曲だからアルバムのいちばん最初にと。いままで、がっかりしたことがないと曲が書けないと思ってたんですけど、“ヒカリ”はそうじゃなくて。僕にとって曲を作ることは〈泣く〉ようなことだったりして、曲が出来るとすっきりするんですよ。でも、泣くのって悲しいときだけじゃないですよね。“ヒカリ”は、感動のときの涙を曲にできたんですよ」。

 その〈感動のときの涙〉の原動力となったものとして彼は、〈人との繋がり〉ということをインタヴュー中に何度となく繰り返し、それに感謝した。

「より個人的な歌にはなったけど、〈ひとり〉ではなくなったっていうか、ひとりの歌ではなくなってる。なんか発見がいっぱいあって、いろいろ気付かせてくれた周りの環境っていうのがデカいんですよね。そういう人たちと出会えた自分っていうのは、すごく運が良かった。ほかのバンドや友達、スタッフの人だったりとか……ほんとスゴイんですよ。だから、伝えたいことが増えてきて……でも、それを〈情報〉として一気に広げていくやり方はしっくりこなくて。これはごっち(後藤正文:ASIAN KUNG-FU GENERATION)さんが言ってたことで、それこそ『君繋ファイブエム』じゃないですけど、自分があちこちに行けばいいと。〈広げていく〉ではなくて〈自分が行く〉っていう、それでいいんじゃないかって。ホント、そうだなって思います。ごっちさんとはbounce(2003年9月号)での対談がきっかけとなって突っ込んだ会話もできるようになったんですけど、彼らもいまスゲエことやろうとしてるんですよね。じゃあ、それに対してオレは何をしよう?って思ったら、同じようにやるんじゃなくて、彼らもそうであるように、自分たちのやり方を見つけてやっていくっていうことが僕らなりの回答だと……考えたらオレ、面倒くさい人間ですわ」。

 面倒なもの、手のかかるものには、おのずと〈ココロ〉が込められるもの。LOST IN TIMEが『きのうのこと』に込めたココロは、これまで以上に多くの人たちのココロを動かすに違いない。LOST IN TIME、ただいま絶好調!

「いいことが起こりそうな予感がします。というか起こり始めてます、バンドとしても海北大輔としても。やっべえ、生きてるの楽しい!……って感じです」。

PROFILE

LOST IN TIME
2001年結成。下北沢を中心にライヴ活動を開始し、2002年6月にはファースト・アルバム『冬空と君の手』をリリース。その後、メンバー・チェンジを経て、海北大輔(ヴォーカル/ベース)、榎本聖貴(ギター)、大岡源一郎(ドラムス)という現在の3人になる。切実さに満ちた詞世界と熱のこもったパフォーマンスは、自主イヴェントをはじめとする精力的なライヴ活動で認知度を広げ、各方面で評判となる。2002年10月にリリースされたスピッツのカヴァー・アルバム『一期一会 Sweet for my SPITZ』参加を経て、2003年1月にシングル『群青』、9月には『ココロノウタ』を発表。このたび待望のニュー・アルバム『きのうのこと』(Libra/UKプロジェクト)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年07月08日 12:00

更新: 2004年07月08日 17:44

ソース: 『bounce』 255号(2004/6/25)

文/久保田 泰平