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インタビュー

HOUSTON


「恵まれてると思う。素晴らしい気分さ。タイミング的にもバッチリでシングルもリリースできたし、こんなに嬉しいことはないね。これは天の思し召しだと思うよ」。

 そう語るのは、トラックスターズ制作の“I Like That”で、センセーショナルなデビューを飾ったヒューストン。同曲は本国アメリカをはじめとする5か国でマクドナルドのキャンペーン・ソングに選ばれるなど、新人としてはこのうえないバックアップを得たのだから、そんな彼の言葉も決して大袈裟ではないはず。しかも彼がここまで歩んで来た道程を思うとなおさらだ。

「俺から言わせてもらえば、映画のような人生だったね。若い頃から本当に苦労をしたから。ストリートで歌ったり、クラブで歌ったり、時には歌いたくても門前払いされたりしながら、ネガティヴなことをポジティヴに考え直して頑張ってきたんだ」。

 LAに生まれ育ったヒューストン・サマーズ4世は現在20歳。2パックやR・ケリー、ボブ・マーリーなどをフェイヴァリットに挙げる彼だが、プロのシンガーだった父親からの影響であるR&Bの要素と、フッドで育ったことから身についたヒップホップの要素を融合させたヴォーカル・スタイルは、そんな生活のなかで確立してきたという。その後、19歳でキャピトルとレーベル契約が成立。ちなみに“I Like That”で共演しているチンギー、I-20、ネイト・ドッグとも以前から面識があったとのこと。
「もっと若かった頃、街中でフラフラしている頃に出会ってデモテープとかを渡してたんだけど、レコード契約が取れたから参加してくれることになったのさ。チンギーとI-20はレーベル・メイトでもあるしね。同じウェストコーストのネイト・ドッグは、俺にとってアンクル的な存在だよ」。

 そうして完成した念願のデビュー・アルバム『It's Already Written』は、彼自身もソングライトやプロデュースに関わっている(「75%ぐらいかな?」)ほか、アンダードッグスやジャジー・フェイ、ロイ・ハミルトンなどのヒットメイカーたちも加わり、フロア仕様のトラックはもちろん、女性に捧げたセクシーなスロウまで実に多彩な表情を覗かせる。たとえば、「きれいで美しくて、優しい愛で包み込んでくれる女の子」という意味の造語をタイトルにした“Twizala”や、「この曲を聴いてメイク・ラヴしてもらいたいね」というラトーヤ(元デスティニーズ・チャイルド)とのデュエット“My Promise”、さらにレディ・フォー・ザ・ワールドのカヴァーとなる“Love You Down”にはこんなエピソードも……。

「元カノとメイク・ラヴするときにいつも聴いてたんだよ。この曲のリメイクはしなきゃ、って思ってたんだ」。

 こんなことをサラリと言ってしまう相当なレディー・キラーでもある。確かに「女性のために俺は存在する」と公言しても、その端正なルックスなら納得してしまう。モテちゃって困る、なんて贅沢な悩みはないのだろうか?

「徐々にそういう現象は起きてるよ(!)。まだそんなにクレイジーな状態じゃないけど、アルバムをリリースしたらきっともっと凄くなるだろうね。でも大丈夫、女の子の扱いには慣れてるんだ(!!)。みんな、押し寄せないでくれよ~!」。

 ……とはいえ、プライヴェートでも仲間とスタジオに籠もったりしているという彼。ジャーメイン・デュプリとは絶対に仕事がしたいと語り、次作ではラップも披露するかも、と自身の音楽への情熱は尽きない。自信のほうもかなりのものだ。

「俺はこれからもヒットを生み出して、この世界に長く居続けるだろうと予測してるんだ。一発屋では終わりたくないからね」。

 その一歩をまず力強く踏み出したヒューストンが、今後男性R&Bシーンをますます盛り上げていくことは確実でしょう。

PROFILE

ヒューストン
LA出身。母親の応援もあって早くから音楽に親しみ、教会や学校でヴォーカルの素養を身につけていく。高校に進学した頃から地元のグループに加わり、ラッパーたちに混じってストリートで歌いはじめる。やがて地元のタレントショウなどに参加して、ヴォーカリストのみならず、ダンサーとしての才にも磨きをかけていくことに。そのパフォーマンス映像が話題になったことをきっかけに、2003年にキャピトルと契約。翌2004年、チンギー、ネイト・ドッグ、I-20をフィーチャーしたシングル“I Like That”でデビュー。そのヒットを受け、ロイ・ハミルトンやアンダードッグスらが制作に関わったファースト・アルバム『It's Already Written』(Capitol/東芝EMI)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年09月02日 17:00

更新: 2004年09月02日 17:54

ソース: 『bounce』 257号(2004/8/25)

文/佐藤 ともえ