メトロオンゲン
立体的な音像とダイナミズムが目眩く再現されたセカンド・アルバム『silent orange』!
〈血が滾るなぁオイ!〉と1曲目“m.c.”の後奏部分のハード・ドライヴィンなギター・ソロに興奮してたら、その途中で唐突にカット・アウトされる。それが、緻密な楽曲構成と猛々しい狂暴性を両立させるメトロンゲンの世界への入り口だ。不意打ちぐらいがちょうどいいだろ?てな具合に。
「ファースト・アルバムのときに(静と動の振幅が)うまく出せなくて、今回けっこうそれをテーマにしていて。うまくいったなと」(龍崎雄太、ギター)。
メトロオンゲンのセカンド・アルバム『silent orange』はエンジニア、北村秀治(SUPERCARなどでお馴染み)の優秀な仕事も手伝って、立体感のある音像とダイナミックなバンド・サウンドが手を結んだ力作だ。
「聴けばわかると思うんですけど、歌詞、メロディーをもってきたらほとんどできてるっていう感じの作り方にはなってないと思うんです。それが持ち味っていうか」(龍崎)。
膨大な時間を費やすというアレンジ作業の場である4人でのジャム・セッション。『silent orange』に詰まった濃密なアンサンブルは、バンド内で高いハードルをいくつもクリアしたことを想像させる。
「10回20回ジャムっても思いつかないのが、あるとき2、3分でポンて気がついたり。そういう瞬間のほうが多いですね。開けた感じがしたらOK」(ツチヤユウイチロウ、ヴォーカル/ギター)。
ヒズ・ネーム・イズ・アライヴをフェイヴァリットに挙げ、中学生の頃は「尾崎豊が流行ってるなかスヌープ・ドギー・ドッグを聴きながら水木しげるを読んでいた」と語るツチヤの個人的な宅録音源を端緒に、同じ大学の音楽サークルにいた4人で2002年に結成されたメトロオンゲン。その後の怒濤のライヴ活動と前述の膨大なセッションの数々は、2004年の彼らに確固とした独自性をもたらしたようだ。
「いわゆる〈売れてるバンド〉と比べれば……声と楽器が、特にギターとか肉迫してると思うんですよ。理想は互いの楽器がスキあらば食い合うみたいな。あんま楽器をオケとして考えてない。メロディーがしっかりあるっていうのがでっかい持ち味になるっていうのはわかってるし、それを手放すつもりもないけど、かといって楽器陣の色鮮やかさも消したくないです」(ツチヤ)。
肉体的な反射神経。病的に甘い声。ふてぶてしい知性。メトロオンゲンが紡ぐ新しいサイケデリアはそれらすべてで出来ている。