インタビュー

ミュール・トレイン

古き良きジャマイカ音楽をユルユルと紡ぐ注目のスカ・バンドが極上の新作をリリース!!


 結成7年目にして前作『HUMMING BIRD』で日本のオーセンティック・スカ・シーンに本格的に参戦したmule train。そんな彼らが約1年という極めて短いスパンで新作『caribou』をドロップした。それまでの活動の集大成的な意味合いを持った前作に対してゼロからのスタートとなった今作は、カリプソ~メントからスカに繋がる50年代から60年代初頭にかけてのジャマイカン・ミュージックの道筋をアルバム・コンセプトに掲げ、バンドとしての可能性に挑戦した作品となった。しかしながら彼らが発する、気負いなど微塵も感じさせない超自然体でポジティヴなヴァイブスはいったいどこから生まれてくるのだろう?

「みんなもともと地元(三鷹)の仲間で。古いヤツは幼稚園、小学校からいっしょ。歳もほとんどがいっしょなんですよ。で、高橋(聡、トランペット)、一瀬(高志、テナー・サックス)がサックスを買って。彼らが川に行ってるのにみんなでついていって、遊んで音出して……みたいなのが始まり。ホント近所でやってた感じで」(ドカ、ドラムス)。

 遊び仲間からスタートした11人編成の大所帯バンド。でも音楽的嗜好は必ずしも一致しないのでは?

「(普段から)〈スカをやってる〉って意識でやってないんじゃないかな。でも、多分みんながああいう(50~60年代のジャマイカの)雰囲気が好きで。みんな全然違う音楽を聴いているなかでの最大公約数がスカなのかもしれない。あとは楽しんでやってる感じ、セッションしてる感じが単純に好きなのかな」(川辺恭造、アルト・サックス/ヴォーカル)。

「大体みんな共通して黒人音楽は好きだけど、その他の部分で同じ音楽を聴いてるワケじゃないからこそ、そこで生まれるものがあるんだと思う」(ドカ)。

 なるほど! だからこそコンセプチュアルな新作のほうが前作より楽曲に対して濃いアプローチができ、結果として滲み出てくる深みも増しているのか。インタヴューのあいだ彼らから「楽しんでやる」という言葉が幾度となく出てきたのだが、〈楽しく遊ぶなかにたまたま音楽があった〉というこのスタンスこそが彼ら独特の、ゆるやかで暖かい空気感を創り出しているのかもしれない。

「解散はないなぁ、きっと。誰か死なないかぎり(笑)」(ドカ)。

 実に羨ましい人間関係だなぁ。この先、メンバーそれぞれの子供たちがバンドを組んで親子二世代で共演するなんてことも案外実現してしまったりして。そちらも楽しみです。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年09月16日 12:00

更新: 2004年09月16日 18:48

ソース: 『bounce』 257号(2004/8/25)

文/斉藤 浩一