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インタビュー

GUMX


 いま日本では〈韓流〉なんて言葉と共に、韓国の映画やTVドラマがトレンド化している。また、ポップス・シーンに目を転じれば、いわゆるK-Popはここ日本でもじわじわと盛り上がりつつある。そこで、パンク・シーンにも〈韓流〉の波を起こそうと頼もしい連中がニュー・アルバム『Green Freakzilla』と共に戻ってきた。その名はガムエックス。ガンズ&ローゼズをめざしながらも、彼らがパンクの影響も受けていることを知り、クラッシュ、NOFX、グリーン・デイでパンクの魅力に目覚めたリー・ウォンが96年、ソウルで結成した3人組だ。2003年発表のファースト・アルバム『What's Been Up?』の成功を機にここ日本でも注目を集めはじめた彼らは、同年7月の〈フジロック〉に出演。その後は、単独で日本ツアーも行なっている。

「〈フジロック〉は僕たちにとって、初めての日本公演だった。しかも、前のドラマーが徴兵されたため、ドラマーが現在のチェ・ゴンに代わったばかりで、彼とやる初めてのライヴでもあったんだ。だから、余計に緊張したね。ライヴは無事終わったんだけど、自分たちがまだまだ経験不足だってことを思い知らされたよ」(リー・ウォン:以下同)。

 異国の地をツアーするなかで、バンドとしてより一層、結束を固めた彼らは韓国に戻ると、〈フジロック〉の悔しさを胸にあらゆる面で成長しようと、それまで以上に精力的にライヴ活動に邁進していった。新作の『Green Freakzilla』には、その成果が反映されていると、彼は自信満々に語る。

「なによりもまず自分たちに正直に作ろうと心掛けたよ。歌詞やメロディー、すべての面でありのままの自分たちを表現しようとしたんだ。『Green Freakzilla』って〈緑のバケモノ〉って意味なんだけど、僕を怒らせる連中を緑のバケモノに例えて、そういう連中に対する怒りを表現したんだ。おかげで胸の内にくすぶっていた怒りが浄化されて、気持ちがスッキリした。そういう意味でも、新作は凄く気に入っているよ」。

“Dropdead”と題されたインストで幕を開けるこの新作には、まさにグリーン・デイ以降の流れを思わせるポップかつファストなパンク・ナンバーを中心に、甘酸っぱいハーモニーを聞かせるミッドテンポのポップ・ソングや、ヘヴィメタルの影響も窺わせるヘヴィー・ナンバーなど、多彩な楽曲が収録され、特に親しみやすいメロディーという意味では、今後、パンクの枠組みに止まらないバンドに発展していける可能性もアピールしている。

「メロディーは音楽を聴く人を楽しませる、もっとも重要な要素だと考えてはいるけれど、だからといって、メロディーだけにこだわっているわけではない。それにガムエックスとして、いろいろな音楽を作りたいとも思わないんだ。たとえ、いわゆるパンクの枠からはみ出すような曲が出来たとしても、最終的にはガムエックスというバンドの範疇に収まるような曲にしたい。僕自身、ドラスティックな変化を好まないんだ。いまのまま、少しずつ発展させていければいい」。

 パンクだけにこだわっているわけではない。しかし、だからといって、今風になんでもありと考えているわけでもない。そこにはリー・ウォンならではの、しっかりしたバンド哲学というか、美学があるんだろう。ひょっとすると、いまだアンダーグラウンドなポジションに甘んじている韓国のパンク・シーンを、もっともっと盛り上げるには、まず自分たちがパンク・バンドとして大きな存在にならなければ、という気持ちがどこかにあるのかもしれない。そんな彼らの活躍はきっと韓国のパンク・シーンを大きなものにしていくに違いない。いまは、まだ焦る必要はない。

PROFILE

ガムエックス
96年、リー・ウォン(ヴォーカル/ギター)を中心にソウルで結成。ガムというバンド名で活動をスタートさせ、デモやEPなどを発表する。2000年、リー・ヤング(ベース/ヴォーカル)が加入し同時にガムエックスと改名、韓国のインディー・レーベルと契約を果たす。その後、チェ・ゴン(ドラムス)が加わり現在の体制となる。2003年にはファースト・アルバム『What's Been Up?』が日韓両国でリリースされ、いずれの国でも好セールスを記録。その年に行われた〈フジロック〉へも出演を果たしている。今年の3月からニュー・アルバムのレコーディングを開始、このたびセカンド・アルバム『Green Freakzilla』(CARNAGE/トイズファクトリー)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年09月16日 12:00

更新: 2004年09月16日 19:07

ソース: 『bounce』 257号(2004/8/25)

文/山口 智男