インタビュー

SMRYTRPS

ラストでもトワイライトでもない、才能のチャンプルー……個性豊かなサムライ集団の登場!!


「いままでの日本は〈みんないっしょがいい〉ってことを言ってきたんだけど、それぞれの違いを認め合える社会っていうのが実は良いわけで。自分たちもそれとシンクロしてて、クルーの内側を見てる人もいれば、よそを見てる人もいるけど、そういうそれぞれの違いを認め合えるのがいいじゃないかなと」(タカツキ)。

 それぞれがクルー外の活動を持つ6MCが集まったSMRYTRPS(サムライトループス)。彼らがクルーとして活動していくにつれ、その存在は日本語ラップ村の、とりわけアンダーグラウンドなところでクローズアップされていった。だが、クローズアップされればされるほど、その居場所に対する迷いや違和感もクルーの中で大きくなっていったという。

「迷った時期もあるんですよ。日本語アンダーグラウンド・ラップの渦中に位置づけられてそういうイヴェントにも出てて、〈それでいいのか?〉みたいな」(Y.O.G.)。

「メジャーでやってもダッサいことしか評価されないし、かといってアングラは足の引っ張り合いばっかりしてるようなとこで、愛想つかして。ウチらにはもう少し別の居場所があるやろって」(タカツキ)。

 しかし、同じことをクルーのメテオやゾエに訊けば、きっと違う答えが返ってくるだろう。それぞれが自分の思いのままに、誰かとも、特定の音楽や時流とも合わせることなく向きたい方向を向く。SMRYTRPSとはそういう集団なのだ。

「なんとなく〈こうじゃなきゃいけない〉って空気があって擦り合わせをしようかと悩んだことがあったんですよね。でも、サムライは擦り合わせようがなかった(笑)。それでええやん、こっちがいいんだって」(タカツキ)。

「その時々でモチヴェーションが上がってる人が先導して、引っ張って行く」(Y.O.G.)というクルーのレコーディングが間にブランクも挟んで約2年。このほど完成した彼らのセカンド・アルバム『ことばのおんがく』は、タカツキいわく「自分が先導していくSMRYTRPSのピリオド」となる「この時期の最高傑作」。週の何日かを規則的に費やされた録音にはその間の楽しさと苦しさが結果的に詰め込まれたが、アルバムに重苦しさはない。

「時間が経ってる分だけ客観的に聴けるし、作ってた時とは違うように見えてくる。改めて聴くと、バランスもいいものになったと思う」(ゾム)。

「〈こういう曲を作ろう〉とかってみんなが示し合わせてはいないけど、なるべき形になった」(タカツキ)。

「大半がタカツキさんのトラックっていうのもあって、『Keep Condition EP』(2003年)前後の作風がよく出てますね」(Y.O.G.)。

「しがらみがないぶん、自由に楽曲を作り始めてて。サムライ的には健全な状態ですごい楽やし、いい音楽ができるようになった」(タカツキ)という彼らは、DJのカトウケイタ、Y.O.G.のトラックをメインにしたサード・アルバムへと早くも走り出している。クルー外でも、Y.O.G.が先頃ソロ・アルバムを、タカツキがユニットであるSUIKAのアルバムをリリースしたばかり。Siphon Code(ゾムとゾエのユニット)とSemmyの各アルバムも年内~年明けに、さらにはタカツキとイルリメの共作EPも既に完成、メテオもD.M.R.での新作がもうすぐ……と各人の活動もますます活発化している。「サウンド的に憧れてた海外のものにどれだけ並べられるか、日本語ラップの紋切り型からどれだけ離れていくか」(タカツキ)という両極を行き来するSMRYTRPS内外での個々の活動はさらに予想外なものへと転がりそうだ。

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掲載: 2004年09月24日 18:00

更新: 2004年09月24日 19:24

ソース: 『bounce』 257号(2004/8/25)

文/一ノ木 裕之