インタビュー

The Music

サイケデリック・グルーヴ・マシーン=ミュージックが、強度を増したサウンドを引っ提げてセカンド・アルバム『Welcome To The North』をリリースする!


 はじめに言っておくが、ミュージックの最新アルバム『Welcome To The North』は、間違いなく前作『The Music』以上の衝撃をシーンに喰らわす正真正銘の大傑作である。2002年、彼らが巻き起こしたダンス・グルーヴ渦巻く巨大なサイケデリック・トルネードは凄まじい破壊規模を記録。ロック・リスナーの心に恍惚と深い感動の爪跡を残した。あれから丸2年が経過……。彼らはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやパール・ジャム、そしてインキュバスなどのプロデューサーとして知られる、オルタナ界の重鎮ブレンダン・オブライエンをプロデューサーに迎え、最高のセカンド・アルバムを携えて帰ってきた!

「はじめにレコード会社から彼を紹介されたとき、正直に言うと〈……誰?〉って感じだったんだよ(笑)。でもイギリスに呼んでライヴを観てもらったり、実際に会って話をしていくうちに〈よし、やろう!〉となったわけ。ただ彼を起用することは、俺たちにとってデカい賭けだったんだよ。だって俺たちがただのアメリカン・バンドみたいになっちゃったら、つまらないだろ?」(アダム・ナッター、ギター)。

 しかし、それは結果的に最良の出会いとなったことは、収録曲が持つ爆発的なエネルギーの増幅にはっきりと現れている。

「実は俺たち、1枚目のサウンドの弱さがずっと不満だったんだ。だけどブレンダンは俺たちが求めていた、バンド・サウンドが持つ巨大なパワーをバッチリ与えてくれたよ」(アダム)。

 今作を聴いていちばん驚かされたのが、前作で象徴的だったトルネードのようなグルーヴの曲より、地を這うようにプリミティヴでカオティックな曲に比重が重く置かれていることだ。一体、彼らになにがあったのだろうか?

「意識的に、こういう曲調でいこう!っていうのは全然なかったね。たぶん、世界中をツアーで2度も回ってきた経験と、短い時間で集中して曲を書いたことで、より直接的な感情が吐き出されて生まれたグルーヴなんだと思う」(ロブ・ハーヴェイ、ヴォーカル)。

 そう、彼らは到底新人とは思えない密度で、2度の世界ツアーを経験している。そこで、常に行動を共にするメンバーと、お隣のリバティーンズのようなトラブルなどに発展することはないのだろうか?という質問をしてみると「全然ないね!」(アダム)と一蹴。

「そりゃー、たまには意見の食い違いも起こるけど、激しいトラブルになることはまずないよ。みんな同じ方向を向いているし、お互いの耳を信じているからね」(ロブ)。

 すでに今年の〈サマソニ〉で、以前より何倍にも増して強固になったサウンドとグルーヴが一体となって巻き起こす音の渦を、身をもって体感した人も多いはずだ。あの奇跡のような一体感は、メンバー間の強い結束があるからこそ生まれる、とてもナチュラルなエネルギーの放出なのだ。さらに今回、われわれを驚かせたことがある。それはいままで、ミュージックの視覚的象徴であった、幾重にも折り重なる円がモチーフのアートワークを捨てて、まったく新しいヴィジュアル・イメージを持つジャケットに仕上がっていること。そのアートワークを手掛けたのは、ジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーなどのアートワークで知られるあの〈伝説の男〉、ピーター・サヴィルなのである。

「ジョイ・ディヴィジョンの『Closer』を見れば分かるけど、彼は強烈にアイコニック(象徴的)なイメージをアートワークに宿すことができるアーティストなんだ。今回のアルバムはサウンドの面でアメリカ人との共同作業がすごく多かったぶん、ピーター・サヴィルの持つ、強烈なイギリス人らしい芸術性が必要だった。あとはイギリス人として、良い意味で伝統を受け継ぐという精神を大切にしていきたいんだ」(アダム)。

 彼らはアメリカに迎合するために、ブレンダン・オブライエンをプロデューサーに選んだのでは、決してない。むしろそれは、蔓延する〈アメリカ至上主義〉を蹴散らす最善のサウンドを欲した結果であり、彼らのめざす場所はさらにデカい。その証拠に、アルバム・タイトルは故郷のこと?という質問に、ロブはこう返してくれた。

「半分ね。世界中を見てまわって分かったのが、世界って意外と小さいんだなってこと。故郷のリーズは大切な街だけど、いまは〈俺たちの世界へようこそ!〉って気分なんだよ!」(ロブ)。

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掲載: 2004年09月24日 12:00

更新: 2004年09月24日 19:27

ソース: 『bounce』 257号(2004/8/25)

文/冨田 明宏