オールド・ソウル・ルネッサンスの動き
ジョス・ストーンのデビューと前後して話題になっていたのが、ワシントン出身のリッキー・ファンテだ。今年フル・アルバムをリリースした彼は、オーティス・レディングなど60年代サザン・ソウルの熱い歌唱をいまに伝えるシンガーで、オールド・ソウル回帰現象!?とも騒がれたものだった。ただ、彼とジョスの共通点は今時珍しいほどヒップホップの匂いを感じさせないことでもあり、その意味でいわゆる〈ネオ・ソウル〉勢とはまったく異なる流れにあるわけで、そういうアーティストたちと簡単に結びつけるのは早計だ。一方、アル・グリーンが往年のハイ・サウンドを纏って復活したり、メイヴィス・ステイプルズが11年ぶりにガチンコ作をリリースしたり、少しニュアンスは違うがハワード・テイトが31年ぶりに新作をリリースしたり……と、演じ手の世代を問わなければ、オールド・ソウルの薫りを湛えた面々が元気なのは確かだ。また、キャンディ・ステイトンのフェイム音源や、ジョスもデビュー作でカヴァーしたベティ・スワン(P78を参照!)など往時の音源が続々とリイシューされているのも、こうした〈回帰〉現象の余波なのかも知れない。
そして、そんなきっかけを作ったジョスのブレーンについても、再評価の波は押し寄せている。その筆頭はベティ・ライト率いるマイアミ・ソウルの要人たちだ。ソウル・ジャズの編集盤『Miami Soul』はそのへんのエッセンスを押さえた好盤なのでぜひチェックしてほしいが、今年に入ってからは、リトル・ビーヴァー、ティミー・トーマス、ラティモアらのベスト盤が次々と登場。前2者に関しては先頃オリジナル・アルバムもリイシューされたばかりなので掲載しておこう。さらに本文では触れきれなかったが、ラモン・ドジャーのペンによる“Spoiled”でストリングス・アレンジを手掛けているのはフィリー・ソウルの伝説=トム・ベル! もちろん演奏は前述のマイアミ勢だからして、モータウン~フィリー~マイアミのソウルメンが一堂に会した凄い曲だと捉えることもできる。このように、先人への真っ当な評価を促すルネッサンスならば大歓迎だ。
▼本文に登場したアーティストの作品を紹介
マイアミ・ソウルのコンピ『Miami Soul』(Soul Jazz)
- 前の記事: Joss Stone