インタビュー

Runt Star

バンドの結束を強化し、さらに強靱なグルーヴを獲得した久々の新作『You Are Free』!!


 バンドの現状を、ポジティヴに、ストレートに表現した1曲目“Free”。〈転がる悲しみを超えて さあ行こうぜ〉と歌われるこの曲を聴けば、彼らの2年半というブランクが無駄なものではなかったことがわかるはずだ。70年代のニュー・ソウルからの影響をバンド・フォーマットに乗せて、グルーヴとメロディーに注ぎこんだ〈メロウ・グルーヴ〉を地で行くバンド、RUNT STAR。インディーで活動するアーティストの音源をいち早く紹介してくれた良心的コンピ『Smells Like Teenage Symphony』『新宿ミーティング』への参加。また、キーボードの坂和也が、つじあやのやCymbalsの作品/ライヴで客演を果たしていることでその名前を覚えたファンも少なくないだろう。メンバー・チェンジやレーベル移籍という困難を乗り越え、やっとのことで届けられた新作『You Are Free』は、RUNT STARというバンド・ストーリーを、ゆっくりと、しかし確実に進めてきたことの証明と言える内容となっている。

「リリースがなかった2年半の間に、ライヴを月2回くらいのペースでやっていたんだけど、お客さんの反応で〈初めて曲を聴いた時のインパクト〉の重要さを体感して。その期間は楽曲の〈わかりやすさ〉についてかなり考えていました。アルバムのなかでも“Free”は、人に向けて歌うことを特に意識した曲ですね」(高津哲也、ヴォーカル/ギター)。

「メンバー・チェンジがあって、リズム隊が一つになった感じがある。それにつられてピアノやギターがやることも変わってきたんです。バンド全体の判断力が前に比べて上がってきた」(坂和也、ピアノ/オルガン)。

 より安定感を増した演奏と、バンドの結束によって生まれた楽曲からは、焦りや不安を克服した彼らの自信が窺える。その自信は、「自分たちにとって新しいことがないと燃えない」(高津)という理由で導入された、バンドにとって初のホーンが作品のテンションを盛り立てていることからもあきらかだ。

「具体的なヴィジョンというより、究極のポップ・ソングを作ってみたいといつも思ってるんです。一度聴いたら忘れられないような、即効性があって、部屋の芳香剤にはならないような曲が。それはいつの時代でもあるべきだから」(高津)。

 彼らの理想とする音楽は、まだ彼ら自身にも明確には見えていないのだろう。だが、『You Are Free』にはその萌芽がしっかりと息づいているように思う。

▼RUNT STARの作品を紹介。

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掲載: 2004年10月21日 12:00

更新: 2004年10月21日 16:42

ソース: 『bounce』 258号(2004/9/25)

文/ヤング係長