インタビュー

曽我部恵一

みずみずしいバンド・サウンドを前面に打ち出した新作『STRAWBERRY』が完成!


 今にして思えば、ファースト・アルバム『曽我部恵一』に収録されていた“おとなになんかならないで”は、愛娘ハルコちゃんに捧げられた小さなラヴ・ソングでもあり、実はアーティストとしての安易な成熟を拒絶する彼みずからの信念を歌いあげた、ある種のメッセージ・ソングでもあったのではないだろうか??なんて邪推が頭をかすめてしまうぐらい、このたび届けられた曽我部恵一のサード・アルバム『STRAWBERRY』は、とにかくみずみずしくてフレッシュな衝動に満ち溢れている。

「今回のアルバムは、とにかく学園祭ノリでやってみようと思って。だからレコーディングもガレージ・バンドっぽい感じで。基本的にほぼ一発録りだし、中学生が聴いても、すぐにコピーできるようなアレンジをあえて心掛けたり」。

 彼の代名詞ともいうべき琴線直撃のメロウな楽曲も収められているものの、作品の多くを占めているのは蒼さと熱さがスパークする疾走感溢れるロックンロール! そしてバックを務めているのは、ライヴでもお馴染みOO TERESA。今作で垣間見える両者の関係は、まるでニール・ヤング&クレイジーホース……というよりも、むしろ高校の気の合う先輩&後輩といった案配。

「上品な音楽とか高尚な音楽っていうのをとっぱらって、もう一度、シンプルで過激なロックンロールを演奏したいなと思ったんだ。それでOO TERESAといっしょにやり出したわけ。あの下品で音楽性の低い連中と(笑)」。

 去る5月から本格的に運営を開始した主宰レーベル〈ROSE〉しかり、こうした初期衝動は音楽以外のさまざまな事柄にも多くの影響を及ぼした模様。

「現状を嘆くのにも飽きちゃったし。だったら、こっちからおもしろいものを発信してやろうって」。

 いろんなことに夢中になったり飽きたりしながら、素敵なサムシングを絶えずリスナーに提供してきた彼だけに、これからの活動にも大いに期待できそう。

「子どもの頃のワクワクする気持ちが戻ってきてる気がする。大人になるにつれ、みんなどこかで諦めちゃって、自分が暮らす世界の枠だけで物事を考えだすでしょ。それを一切やめてみたの。自分自身で、どれだけおもしろいことができるのか? それをこれから徹底的に追求していこうと思ってるんだよね」。

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掲載: 2004年10月21日 12:00

更新: 2004年10月28日 15:27

ソース: 『bounce』 258号(2004/9/25)

文/望月 哲