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インタビュー

Zoobombs

極限のプリミティヴ・ミュージック――新作を引っ提げてリーダーのドン・マツオが語る!


 特異なバンドである。日本のロック・シーンにおいて確固たる地位を築きながら、一時もそこに留まることなく破壊を繰り返してバンドを前進させていく。そんなズボンズの活動の羅針盤となるであろう新作『New San Francisco』が発表された。今作に至る過程において興味深いのが、初共演アーティストとのインプロヴィゼーションという演奏手法を徹底実践した音楽空間〈Future Jam〉。前作『LOVE IS FUNKY』リリース後、ドン・マツオが定期主宰しもっとも自身をエキサイトさせたイヴェントである。

「今現在のズボンズの音楽の在り方みたいなものは、〈Future Jam〉以降のもんだとは思います。あそこで得たインスピレーション、あの活動を通して、他者と違う自分だけの音楽の道の確固とした方向性がわかってきた。そうあれたのは、そこにいるミュージシャンが皆、自分のフィーリング、自分自身を解放するという方向に向かってたからだと思う。自分で曲を作ってバンドで演奏してっていうなかでは絶対生まれ得ないメロディーやリズムが、極々自然に出てくる瞬間があって。そういう時に自分の音楽のルーツっていうものに対して縛られなくなったのも確か。日本人的なルーツとかってレヴェルの話じゃなくて、もっとプリミティヴな部分、童謡だ歌謡曲だっていう以前の原始的な記憶に遡ったところからダイレクトに音楽が出てくる感じがすごいあったんです」。

 増子直純(怒髪天)、奥野真哉(ソウルフラワーユニオン)、ホッピー神山などなど名立たる音楽家を迎え、その場その瞬間の昂りのままに音を出し〈音楽〉を創るという、無限の可能性と破綻の危険性とを秘めたこの試みが今作へ繋がったことは想像に難くない。全曲一発録り、要した時間はわずか2日間(!)、即興のなかで生まれた瞬間の音像の記録、それが今作だ。

「半分以上がその場のインプロヴィゼーションで出来た曲だからね。テーマもないしテンポですら出してない(笑)。とにかくガーンっとやり始めて、それに対してダーンっと……言葉にするとすごい馬鹿みたいになっちゃうんだよねぇ(笑)。でも実際に、ただその場で起こってるだけなんですよ。自分たちでもまだその辺の作業に関して確立した方法論があるわけじゃないから」。

 長嶋茂雄ばりの感覚論(笑)、だが真実だろう。縦横無尽のジャム・セッション、往年のジャズ・プレイヤーがステージ上で見せるような、互いの息遣いさえ感知して繰り出されているようなリズムとグルーヴ、各人のイキッぷりはただただ凄まじい。そしてそこにはドン自身のロック・ミュージック自体に対する(敬意と愛情ゆえの)アンチテーゼも感じずにはいられない。

「今回のようなやり方をしたのは、ビートルズ以降ずっとやってきたようなロックのレコーディングの方法をやるのはもう退屈だなあ、そういうのは俺たちの本意じゃないなあと思ったのもあったんですよ。そういう意味で僕自身が考えるロックの在り方っていうのはもうとっくに終わってんのかもなとはちょっと思いました。ローリング・ストーンズは僕にとって一番大きい存在だけど、でも僕らとローリング・ストーンズはもう交わらないな、やっぱり僕らは彼らより新しい時代の人間なんだなって」。

 既存のロックという枠や概念から外れることで得た新しい音楽の形。それを何と呼ぶかは人それぞれだろうし何と呼ぼうがかまわない。今ここで鳴っているズボンズの音楽にかつてなく心も身体も昂らせている自分がいる。それだけで十分じゃないか。

▼ズボンズの作品の一部を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年10月28日 16:00

更新: 2004年10月28日 18:03

ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)

文/山崎 聡美