インタビュー

Flogging Molly


 スメルズ・ライク・ギネス&スピリッツ! 今年4月の初来日公演でもボクらを〈ド宴歌パラダイス〉のド真ん中に導いてくれた、LA発のアイリッシュ音楽+パンク・ロックの醸造工場、フロッギング・モリー。彼らが産み出す、トラッド音楽の持つマッタリ感とロックならではの熱い衝動を併せ持った、パンキッシュかつポーグスイッシュなノリノリ・アッパー系癒しナンバーに、酒と同じくハマッて止められなくなる人が続出中だ!

「幼い頃、僕の家族はしょっちゅうパブに行っては、母さんがピアノを弾いて、おじさんがアコーディオン、ほかにもティン・ホイッスルやマンドリン、フィドルにスプーンなんかをみんなでいっしょに演奏していたんだ」(デイヴ・キング:以下同)。

 80年代にはモーターヘッドのメンバーらと組んだファストウェイで活動していた彼が、生まれ故郷であるアイルランドのトラッド音楽を演奏するようになったのは、90年代頭にカリフォルニアに移り住んでからだという。

「違う土地に来て原点回帰したというか、青春時代にはうんざりしていたトラッド音楽が無性に恋しくなったんだ。一度はトラッドに対抗してエレキ・ギターを持ったけど、いまは幼い頃に聴いて育った音楽がナチュラルかつ純粋に曲として生まれてくるんだよ」。

 当初はデイヴと紅一点のビューティー・ヴァイオリニスト、ブリジット・レーガンの2人でスタートしたが、パブなどで演奏をしていくうちに仲間が増え、プロ・スケーターでもあるマット・ヘンズリーらが加わって、いまのメンツに固まったのが96年ごろ。以降、熱狂のライヴ・アルバム1枚と強力なオリジナル・アルバム2枚をリリースし、酒場から始まったバンドは、〈Warped Tour〉に5度参戦するほどのツワモノとなった!

「僕らはユニークなサウンドを演奏していると思う。初めてみんなで音を出したとき、部屋の中にはエネルギーが満ち溢れていたよ。もしバンドにマンドリン、アコーディオン、ティン・ホイッスルがなかったら、僕らはパンク・ロック。ギター、ベース、ドラムがいなかったら、僕らはトラディショナルなアイリッシュ音楽だろうね。このバンドにはその両方があるんだよ」。

 熱いのは楽曲だけじゃナイ! このたびリリースされた3枚目のスタジオ・アルバムとなる新作『Within A Mile Of Home』では、痛烈な大統領批判や、アイルランドの民族が混乱や紛争のなかでも生き延び、みずからの伝統を維持し続けるために音楽が果たした役割についても歌うなど、そこに込められたメッセージもエネルギッシュで強力なものばかりだ。

「音楽こそが僕らに残されたすべてなんだよ。だから誰にもそれを奪うことはできないだろうね。そして次の世代へメッセージを渡す役割を助けるのが歌詞なんだ」。

 また彼は、ジョー・ストラマーやジョニー・キャッシュについても、〈全力で人生を駆け抜けた男〉と歌い、いまは亡き偉人たちを讃えている。

「僕自身も、死ぬ間際に何を残せたのか?なんて考えるのは御免だね。どうせなら後悔なんて残さずに去りたいのと同時に、いまここでの人生を楽しみたいんだ」。

 幼少時代のトラッド音楽と青年期のパンク・ロックを、この〈フロッギング・モリー〉で初めて結び付けることができたというデイヴは、「ようやく自分のやりたいことがやれるようになった」と率直に語る。

「僕はこれからも、僕自身が歌い続けたいこと、そしてみんなが聴きたいことをずっと歌い続けるよ」。

 ただの酔いどれと思ってたらヤケドすんぜ!というデイヴの声が聞こえてきそうな秋の夕暮れ時。そこに酒と仲間と良い(酔い)音楽があれば、もう宴の始まりだ!!

PROFILE

フロッギング・モリー
デイヴ・キング(ヴォーカル/ギター)が結成した7人組。現在のメンバーは彼のほか、デニス・ケイシー(ギター)、ネイザン・マックスウェル(ベース)、ジョージ・シュウィント(ドラムス)、ロバート・シュミット(マンドリン)、マット・ヘンズリー(アコーディオン)、ブリジット・レーガン(ヴァイオリン)。97年にデビューし、パンクとトラッドを融合させたサウンドでLAを中心にファンを獲得。その後も2000年の『Swagger』、2002年の『Drunken Lullabies』と順調にアルバム・リリースを重ね、いまや〈Warped Tour〉のトリを務めるほどの人気を誇る。このたびニュー・アルバム『Within A Mile Of Home』(Side One Dummy/bullion/ULF)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年11月04日 13:00

更新: 2004年11月04日 18:21

ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)

文/ヤマダ ナオヒロ