インタビュー

Kings Of Leon

期待以上のデビューを飾った家族楽団、キングス・オブ・レオンが2作目をリリース! このアルバムが持つ奇妙な先進性は、サザン・ロックの未来を照らす!!


 説教師だった父と共に、幼い頃、南部諸州を旅していたネイサン、ケイレブ、ジャレドのフォロウウィル3兄弟が、テネシー州ナッシュヴィルで従兄弟のマシュー・フォロウウィルと3年前に結成したバンド、キングス・オブ・レオン。彼らは昨年、アルバム『Youth & Young Manhood』でデビューするやいなや、平均年齢22歳とはにわかには信じがたい長髪&髭のムサいルックスと、いまどき珍しいぐらいに南部の豊かな伝統を感じさせるロックンロールで注目を集めた。南部で育った者だけが持ちうるサザン・フィーリングを、その音楽性の核としながらも、しかし往年のサザン・ロック・バンドが持っていた〈Too Much Is The Best〉のアティテュードやレイドバックした感覚とは無縁のロックンロールは、むしろガレージ・ロック・リヴァイヴァルの流れで捉えられ、キングス・オブ・レオンは〈ストロークスの南部版〉などと謳われた。そして、彼らは本国USよりも、むしろUKで、そのストロークスを追いかけるように人気を集め、デビュー・アルバムはついに50万枚を突破するセールスを記録。さらには〈NMEアワード〉でUKのバンドを差し置いて、最優秀新人賞まで受賞してしまった。

 そして、それから1年。彼らは前作に引き続きプロデューサーを務めたイーサン・ジョーンズと旧友アンジェロと共に前作をはるかに上回るニュー・アルバム『A-ha Shake Heartbreak』を完成させたのだった。

「単にいい曲を書いてレコーディングしようと意識しただけさ。ただ、1曲1曲がそれぞれにいいってだけではなく、その曲が終わっても消えてしまわずに次の曲に続いていくような、アルバムとしてうまく曲が繋がっているものを作りたかった。曲と曲がお互いに息をし合って、歌詞もちゃんと密な関係にあるような1枚のアルバムをね。だから、スタジオでは俺たち、ベストをめざした。アレンジ、歌詞、各パートの演奏、それに歌……あらゆる面で、いま自分たちにできることすべてをやり尽くしたんだ」と現在17歳の末弟ジャレド・フォロウウィル(ベース、以下同)は語る。

 その新作のいちばんの聴きどころは、曲と演奏が一体になって醸し出す不思議な味わいだ。もちろん、スロウな曲や単にロックンロールとは言えない曲も増え、楽曲の幅が広がったこともあるんだろうけれど、それだけでは説明しきれない、聴く者を捕らえて病みつきにさせる魅力がそこにはある。その個性を説明することはなかなか難しい。大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、こんなロックンロール、どこにもない。その秘密はひょっとすると、こんなところにあるのかもしれない。

「(バンド・アンサンブルは)テレヴィジョンとか、俺たちのサウンドには似つかわしくないタイプのバンドに影響されている。ジョイ・ディヴィジョンとかハッピー・マンデーズとか、それにキュアーやピクシーズ。新しいバンドもいるけど、インターポールとかキラーズとかスティルズとか、俺たちのサウンドからは想像できないようなバンドばかりだよ。バンドとしての音色ってことでは、テレヴィジョンがいちばん近いと思うんだ。音楽性という意味じゃないよ。各楽器の音色って意味で、そういう音をめざしていると思うんだ。俺が理想だと思うベースの音色はジョイ・ディヴィジョンなんだ」。

 曲を作っているネイサンやケイレブに尋ねれば、もっと別の名前が挙がるかもしれないけれど(ケイレブはタウンズ・ヴァン・ザントの影響を認めている)、それにしたって、まさかテレヴィジョンやジョイ・ディヴィジョンの名前が出てくるとは!

   「ギターのマシューはもっとグラム寄りで、シン・リジィが好きなんだ。俺たち、兄弟に従兄弟だけど、好きな音楽はぜんぜん違うんだよ。兄貴たちが俺のことを信じてくれる理由の一つには、俺が新しいバンドを彼らに紹介してやるからだと思うんだ」。

 この新作を聴く前は、正直、デビュー作のおもしろさは、まぁ若気の至りみたいなもので、ひょっとすると歳をとることで平凡なルーツ・ロック・バンド、それこそ時代遅れのサザン・ロック・バンドに落ち着いてしまうんじゃないか?と心配もしていたけれど、ニュー・アルバム『A-ha Shake Heartbreak』を聴き、キングス・オブ・レオンの予想外の懐の深さを知ったいまは、彼らの将来に無限の可能性を期待してしまうのだった。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年12月02日 18:00

ソース: 『bounce』 260号(2004/11/25)

文/山口 智男