インタビュー

カーネーション

結成20周年を迎えた3人――いまだ試行錯誤を続ける最高のロック・バンドが生んだ傑作!


 仲間と連れ立って、意気揚々と家を後にした若き音楽家たち。曲がりくねった道を進むに連れ、1人抜け、2人抜け、20年経って、残っていたのは3人。道はどこまで続くかわからないし、後戻りも出来ない。そんな状況に置かれた時、抱く感情とは一体? そして、ロックンロールと共に大人になるとはどういうことなのか? カーネーションの直枝政広(ヴォーカル/ギター)は語る。

「大抵、22とか24歳くらいで挫折があるよね。みんな社会に出ちゃうから。バンドは、だから、そこが止めるか止めないか、一つの変わり目ですよ。そこで止めたとしたら、それはそれで幸せだと思うし、やったらやったで大変だけど、特殊な生き方が出来るから、それも幸せじゃないかな(笑)」。 

 グローバル化の進行で世界が悲鳴をあげ、音楽産業に疑問符が突きつけられた2004年、新作『SUPER ZOO!』という傑作アルバムを完成させながらも、彼らは相変わらず、もがき、試行錯誤を重ねている。

「今の世の中? 世界的な視点で捉えちゃうのは大袈裟な気がするし……ただ、いま誰もがそれを勉強してるところだと思うんですよ。だから、こんなに揺れてるんだと思う。それにね、俺たちはわかった気になってないし、すごく曖昧なところに居続けてたまま今に至ってるの」。

 彼らは、しかし、白黒つかなくても投げ出したりはしない。そう、この世は〈動物園〉みたいなものなのだ。だからこそ、彼らは取り乱したりせず、やるべきことを徹底的にやる。慎重に吟味し、咀嚼した言葉に熱くしなやかなソウルを乗せること、こうあって欲しいという希望を豊かなバンド・サウンドに託すこと。そして、その2つの要素がかつてないほど見事に調和しているのが、つまり本作である。スカパラ・ホーンズにソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉、ストリングス・アレンジャーの宮川弾……ゲストも実に素晴らしい仕事をしているが、このアルバムはメンバー3人の強固な関係性が何よりも素晴らしい。

「前作から3人編成になって、それって、ロック・バンドの最終形じゃない? そこで自分の本質を大事にしないと、もたなくなっちゃうんですよ。それが自分との向き合い方がシビアになった要因かな。だから、僕たちは自分たちに出来ることを一生懸命やるし、そういうことを堂々と言えるようになってきたんだと思う」。

 前作をファースト・アルバムとすると、よりヴァラエティーに富んだ本作をセカンド・アルバムに例える彼ら。そう言われてみれば、確かにそう思うのだけれど、このアルバムのタイムレスでクラシック然とした鳴りに触れると、もはや時間軸はどうでもよくなってしまう。

「俺らの上にはムーンライダーズがいるけど、あの人たちが昔と同じような顔でニコニコしてたら、自分が年を取ったとは思えないし、そんな長くやってるなんて思えないんですよ。あの人たちがいてくれて、俺たちがいて……ただそれだけですね。だから、20周年っていっても、はっきり言って実感ないんですよ(笑)」。

 結成から20年を経てなお、実感をもって、素直にそんな言葉を吐ける最高のバンド、筆者はカーネーションをおいてほかに知らない。転がる岩は苔むさず、 どこまでもずっと果てしなく転がり続けるつもりらしい。

▼カーネーションの作品を紹介。

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掲載: 2004年12月09日 15:00

更新: 2004年12月09日 17:07

ソース: 『bounce』 260号(2004/11/25)

文/小野田 雄