インタビュー

ephonoscope

目に映り心に写す情景をエモーショナルに具音化したセカンド・ミニ・アルバム!


 最近、器用なバンドが増えた。良くも悪くも……上手くてスマートで美味しいメロやフレーズをさらりと聴かせるような。音を聴くまでは、彼らもそういうタイプだと思っていた。スマートな、いかにもギター・ロック然としたバンドだと。このところライヴハウス・シーンで話題のバンド、ephonoscope……あれ? スマート?

「スマートに……なれなかったんですよね、オシャレなバンドになりたかったんですけど(笑)。ありのままの自然体でいようとするとこうなる……すごい人間臭い人間なんで(苦笑)」(岩間、ヴォーカル)。

「バンド結成のルーツを辿ると、コーンとかレイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)、311とか(笑)」(高橋、ベース)というだけのことはある、ラウドでダイナミックで重厚、劇的なサウンドと、その昂りに劣らぬエモーショナルなメロディー、ストレートな歌詞。タイトルが象徴するように、濃淡のハッキリした情景が色鮮やかに展開していく。

「前作『chronograph』を作ってすぐコレを作り始めたんですけど、もう見たものをそのまま音や歌詞、作るネタにしていったんですよ。電車の中でボヤーッと眺めてる外の景色とか歩きながら見る街の中とか、見たものとそこから浮かんだものを言葉にして歌にして。例えば、俺ら東京っていう都会の景色に憧れて出てきて、でも今その景色を毎日目の当たりにしてそこで普通に生活してて……憧れてたのってこんなものだったけ?みたいな感じとか。誰かとか何かとかってより、漠然と一つの景色として見る。……そうすると淋しくなるんですけど(笑)」(高橋)。

 それらは、日々の暮らしの中で繰り返す葛藤の情景と言ってもいいかもしれない。だがその葛藤が独りよがりのモノクロームで終らずダイレクトに心身に響くのは、歌言葉にも音にも曖昧な表現がほとんどないからだろう。

  「やっぱり音はガツンッて出したいし、ズドーンッといきたい。歌詞にも言いたいことが強く出てる感じが欲しいですね。直接的な表現、会いたいなら会いたいとか、そういう言葉がガツッガツッと(聴き手に)入ってくるような、字を見てまんま想像できるような歌がやっぱ俺らの持ち味なんじゃないかと思う」(高橋)。

 そして、このバンドの最たる魅力は、不器用なまでに感情を剥き出しにした音や言葉の狭間から溢れる繊細な叙情であると思う。作品を聴き終えた後もその叙情が余韻として心身に残り、彼らが見捉え臨む景色の中に、聴き手それぞれにとっての大切なモノやヒトがシンクロする。私は、その瞬間を味わいたいがためにふたたびプレイボタンを押してしまうのだ。

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掲載: 2004年12月24日 13:00

更新: 2004年12月24日 18:27

ソース: 『bounce』 260号(2004/11/25)

文/山崎 聡美