インタビュー

The Fascinations

新鋭ヴィブラフォン奏者が描く〈私の考えるジャズ〉……しなやかで自由な傑作の登場だ!!


 プレイヤーの襟元に美しい残像を残すマレットの脈動とピアノの内臓が出会った鍵盤打楽器、ヴィブラフォンを自在に操り、極めて純度の高いクラブ・ジャズにアプローチする渡辺雅美。彼のソロ・プロジェクトであるthe fascinationsが、前作『soulful strut』から2年ぶりとなる新作『the fascinations』を完成させた。この作品を前に渡辺は「パンクからニューウェイヴを経て、正直最初はよくわからなかったジャズという音楽を、自分なりに生涯の楽しみに変えていったひとつの成果」と語る。

「僕は生粋のジャズマンではないんです。それはわかっているんです。僕はジャズが好きなのと同じぐらいロックやハウスが好きだし、ヴァイブという楽器も決してムーディーな音を出すだけじゃなく、思い切りパンクに鳴らしたいと思っているんです。だけど、やっぱり上の世代のジャズ畑の人のなかにはそういう態度を〈偽物〉と思う人がいる。でも、僕はそんな人にこそ〈じゃあフロアの真ん中で30分でいいから身体を動かしてきなよ〉って言いたいし、やっぱり僕にとってのジャズというのは、頭で考えるものじゃなく、まず胸にくる音楽なんです」。

 渡辺のそんな思いに呼応したのが、なんとあのピエール・バルー。

「バルーさんとの出合いは幸運でした。クラブで僕がリハーサルをしていたら、そこに偶然彼がいて、どちらからともなく自己紹介をして……。ついには(今作収録の)“FASCINATIONS GROOVE”の歌詞、そしてヴォーカルをお願いすることができた。とにかく彼は伝説の人だし、僕もガチガチに緊張してたけど、最後には〈お金はいい。その代わり今後リリースするサラヴァのアルバムにもこの曲を収録することが条件だ〉なんていう最高の賛辞を貰えたんです」。
 小林径や須永辰緒ら東京を代表するジャズDJも注目する今作には、フロアでも定番のジャズ・ワルツ“Bluesette”やレイ・テラスのヴァージョンも人気の“I Make A Fool Of Myself”のカヴァーも収録。

「たとえこれがジャズじゃないならジャズじゃなくてもいいんです。僕はライオネル・ハンプトンでもロイ・エアーズでもなく、東京の渡辺雅美。これが自分の音楽なんです」。

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年12月24日 13:00

更新: 2004年12月24日 18:31

ソース: 『bounce』 260号(2004/11/25)

文/江森 丈晃